Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
遺伝子転写の時期・場所・量の制御は、転写開始点付近の「プロモーター」配列と、より遠くに存在する「エンハンサー」配列との相互作用により制御される。近年、数百kb離れたシス・エンハンサーによるプロモーター活性化の例も報告されている。このため、個々の遺伝子に対して、長距離エンハンサー・プロモーター相互作用に特異性をもたらすメカニズムが必要である。本研究では、酵母人工染色体(YAC)上にクローン化されたヒト・βグロビン遺伝子座を導入したトランスジェニック・マウス(TgM)を用いて、長距離相互作用のメカニズムを明らかにしたいと考えている。βグロビン遺伝子座は70kb以上の大きさを持ち、5つのβ様グロビン遺伝子が存在する(ε-Gγ-Aγ-δ-β)。遺伝子座の5'末端に存在するLCRエンハンサーは、初期造血期(primitive stage)には近位(LCRから数kb)にあるεやγ遺伝子プロモーターを活性化し、後期造血期(definitive stage)には遠位(数10kb)のβ遺伝子を活性化する。β遺伝子がprimitive stageに発現しない理由として、1)β遺伝子より近位にε、γという強く発現する遺伝子が存在するためLCR活性をめぐる「競合」に勝てない、2)Primitive stageではβ遺伝子もLCRとの「距離」に感受性になる、の2つの可能性が考えられた。これらを区別するために、LCRとβ遺伝子間の距離を変えずに、競合する3つの遺伝子(ε、Gγ、Aγ)のプロモーター領域を破壊したYAC TgMを作製した。このマウスのPrimitive stageの赤血球を解析したところ、β遺伝子が発現するようになった。この結果は、1)の仮説、すなわち野性型遺伝子座においてβ遺伝子が発現しない理由が、他の遺伝子との「競合」にあることを強く支持した。
All 2008 2007
All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 3 results) Presentation (2 results)
PLoS ONE 2
Mol Cell Biol. 27
Pages: 5664-5672
EMBO J. 26
Pages: 2295-2306