Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
腹部大動脈瘤は一旦破裂すると救命率が3割程度と非常に予後不良な疾患である。これまでの研究により腹部大動脈瘤の発症機序として最もコンセンサスを得られているのは、動脈壁への炎症細胞浸潤による中膜及び外膜に存在するエラスチンやコラーゲンの変性である。この炎症細胞のなかで、マクロファージが最も重要な役割を果たしており、マクロファージからのmatrix metalloproteinases(MMPs)の産生を促進するnuclear factor(NF)-κBも、腹部大動脈瘤形成において重要である。プロスタグランディンJ_2(PGJ2)ファミリーは、近年、ペロキシゾーム増殖剤応答性受容体(PPARγ)の強力な生体内リガンドであることが明らかにされている。このPPARγは、マクロファージ活性化の抑制因子であることが知られており、PGJ_2ファミリーはPPARγに結合することにより転写因子NF-κBを抑制し炎症性サイトカインを抑制することが報告されている。腹部大動脈瘤発症機序において重要な役割をなすマクロファージ及びNF-κBに対する抑制作用を有するPPARγの生体内リガンドであるPGJ_2ファミリーは、動脈瘤形成予防効果を有するものと期待されるが、これまでこのような研究はなされていない。そこで我々は、動脈瘤形成過程におけるPPARγとそのリガンドであるPGJ_2の関与について解析を行い、15d-PGJ_2の投与やPGJ_2の代謝経路の上流に位置するPGD合成酵素の遺伝子導入により、動脈瘤形成が抑制されるかどうかを検討することを目的に、研究を進めている。平成19年度はラット大動脈瘤モデル作成に専念し、安定したモデル作成法の習得に従事した。今後、動脈瘤発生メカニズムの検討及びPGJ_2による瘤形成抑制効果の検討を進めていく。
All 2007
All Journal Article (1 results)
Biomateriaials 28
Pages: 486-95