Research Abstract |
筆者は,情報科学教育と問題解決学習(PBL)を有機的に融合した新しい高等学校の情報科学教育カリキュラムISEC-SeT(Information Science Education Curriculum Based on PBL with Squeak eToy)を2003年から開発してきた。ISEC-SeTでは,生徒自身が主体的に問題を発見してそれを定義・モデル化し(問題設定),その問題をコンピュータシミュレーションを用いて分析し,成果を「論文」などの形式にまとめ,発表することを学習目標としている。ISEC-SeTの最大の特徴は,プログラミング環境としてSqueak eToyを導入している点と,生徒が自分自身で問題を設定するPBLを行っている点にある。本研究では,これまでの授業実践で得られた教材をまとめ直して明晰な教科書を作成することと,カリキュラムの解説や授業を成功させるためのポイント等をまとめた指導書を作成することを目的とした。 本研究でははじめにプロトタイプ版を作成し,高等学校の授業でこれを用いた(10〜2月)。そして,授業観察や生徒の成果物の評価,アンケート調査等を用いて多角的な評価を行った。生徒(20名)は熱心に授業に取り組み,作成したプログラムやレポート等の成果物は全て到達目標を達成していた。このため,PBL教科書としての難易度は適当であったと考えられる。また,授業実践後に生徒アンケートを実施したところ,授業の満足度(5段階評価)の平均値は3.85(標準偏差0.65)であった。また生徒の自由記述の内容や他の教員へのインタビューから,改善点を検討した。 これらの結果から内容を再編集し,教科書(約80ページ)と指導書(約130ページ),及び付属メディア(CD-R: Squeak eToy本体,生徒の成果物のサンプルを収録)を完成させた。
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