Research Abstract |
○研究目的: がん化学療法を施行する患者において,血清アルブミン濃度や赤血球画分の低下した場合,抗がん剤の遊離型分率が上昇して有害事象の増強を招く可能性がある。がん化学療法において,アルブミン濃度や赤血球画分を考慮した患者個別の処方設計の構築に参画することを目的とした。 ○研究方法: がん化学療法を施行した患者における血清アルブミン濃度の実態を調査し,疾患や化学療法レジメンとの関連を調査した。また,主な化学療法レジメンにおける有害事象の発現状況を調査し,血清アルブミン濃度や赤血球画分との関係を調査した。 ○研究成果: 外来でがん化学療法を施行した患者946例における血清アルブミン濃度の実態を調査した結果,過半数が低アルブミン血症(4.0g/dL未満)であることが判明した。また,低アルブミン血症の頻度は,疾患の種類や化学療法レジメンによって異なり,膵がん,胃がんおよび食道がんの患者で特に高頻度(71〜91%)であることが判明した。さらに,血清アルブミン濃度とヘマトクリット値との間に正の相関を認めた。 膵・胆がん患者25例におけるゲムシタビンの血液毒性(骨髄抑制)の発現状況を調査した結果,ゲムシタビン投与後15日目の血球数の残存率の中央値(範囲)は,好中球数58%(13〜185%)および血小板数48%(5〜169%)であり,血液毒性に大きな個体差を認めた。ゲムシタビンの血液毒性と血清アルブミン濃度の関連を解析した結果,血清アルブミン濃度が3.5g/dL未満の場合に重篤な血液毒性が高い頻度でみられるとの知見を得た。また,赤血球に高い蓄積性を有するオキサリプラチンについて,オキサリプラチン投与を受けた大腸がん患者の有害事象と赤血球形態の変化を調査した。その結果,初期的な知見ではあるが投与サイクル数の増加に伴った末梢神経障害の発現と平均赤血球容積の増加を認めた。
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