Research Abstract |
【目的】ハンセン病では,咽頭部の変形や麻痺により,誤嚥が起こりやすく,嚥下障害を持つ患者が多い。このため経口摂取が困難となり,低栄養となった患者に対して,経皮内視鏡的冑ろう(PEG)造設術等の栄養サポートを行っている。 MRSA陽性患者に対してPEG造設術を行った場合,術後の創の感染率が非常に高いという報告があり,術前の抗生物質による感染コントロールが重要とされているが,口腔ケアと感染との関係は,まだよく分かっていない。そこで,PEG造設予定患者に専門的口腔ケアを実施し,手術前後の口腔内細菌,MRSAとPEG手術創の感染の有無,細菌同定を行い,PEG造設手術と専門的口腔ケアについて分析することを目的とした。 【被験者および方法】経皮内視鏡的胃ろう造設術(PEG)を受ける患者に対して,咽頭部・頬粘膜・鼻腔から細菌を採取し,培養法にて総菌数・一般細菌・カンジダ・MRSA等を測定し,鼻前庭の洗浄や0.04%グルコン酸クロルヘキシジン溶液を用いた専門的口腔ケア実施後,口腔内細菌叢の変化と臨床症状,口腔ケアの効果を検討する。PEG造設前後,手術創から細菌を採取し,培養法にて総菌数・一般細菌・カンジダ・MRSA等を測定する。測定後,統計処理を行い,口腔内細菌との関連を測定する。 【結果】PEG造設前にMRSA陽性であった専門的口腔ケア非介入患者では,術後感染を起こし,PEG周囲からMRSAを検出した。専門的口腔ケアを行った患者では,鼻腔・口腔内ともに細菌数は減少した。PEG造設術直前にはMRSAは検出されず,術後感染を起こさなかった。 【結論および考察】専門的口腔ケアをPEG造設術前に行うことは,術後感染の予防に有効であった。PEG造設前には歯科受診し,口腔ケア・細菌検査が出来るよう,歯科医は栄養サポートチームに提言し,クリニカルパス等を整備し,術後感染の予防に努めることが重要である。
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