Research Abstract |
ポータブル心電計を用いた小動物心電図の未病学的診断の検討 福岡動物病院看護士学院権田辰夫 【目的】近年ペット動物の飼育頭数が急速に増加し,獣医療やペットフーヅの開発・改良によりペット動物の高齢化も進んでいて,心不全など生活習慣病が増加している。そのような状況において,ヒトのように言葉で訴えられない動物を,何とか未病学的に,初期段階から察知する獣医療の一つとして,今回ヒト用のポータブル心電計をペット動物でも使えないかと検討した。 【方法】市販されている三社のヒト用のポータブル心電計を用いて,動物でも安定した心電図が測定できるような電極の開発と,長毛種の動物でも出来るだけ剃毛しなくてよい導電性クリームの開発,筋活動電位が混入しにくい保定法の開発などを目的にイヌやネコ及びエキゾチックアニマルのウサギやフェレットなどを用いて実験した。 【結果】動物用のバネが弱めのクリップ電極を用いて,市販されている導電性クリームに代えてヒト用シェービングクリームを使用すると,イヌ,ネコ及びフェレットではどの機種でも心電計の波形の感度に微妙な違いはあるが,ほぼ安定した心電図を記録することが出来た。保定時の動物姿勢の違い;仰臥姿勢や犬座姿勢,伏臥姿勢,立位姿勢など,どの姿勢でも動物がリラックスした状態になれば筋活動電位の混入は殆ど見られなかった。 【考察】物言わぬ動物を未病学的に検査する方法の一つとして,ポータブル心電計の応用が考えられ,動物病院に頻回連れて行くことや,深夜など時間外の測定を考えると在宅での測定は格段の利点がある。今回イヌやネコ,フェレットでもヒト用のポータブル心電計が有用であることが分かった。 今回の結果を基に,現在A社ではヒト用ポータブル心電計を動物用に改良して,農林水産省に許可申請中である。
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