Project/Area Number |
19H00524
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 1:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
長滝 祥司 中京大学, 国際学部, 教授 (40288436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 俊彦 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (10219587)
浅野 樹里 (加藤樹里) 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 講師 (10805401)
柴田 正良 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (20201543)
金野 武司 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (50537058)
柏端 達也 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (80263193)
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
橋本 敬 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90313709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥44,330,000 (Direct Cost: ¥34,100,000、Indirect Cost: ¥10,230,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2022: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2021: ¥9,490,000 (Direct Cost: ¥7,300,000、Indirect Cost: ¥2,190,000)
Fiscal Year 2020: ¥10,270,000 (Direct Cost: ¥7,900,000、Indirect Cost: ¥2,370,000)
Fiscal Year 2019: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
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Keywords | 道徳的行為者性 / 傷つきやすさ / 身体性 / モラるラック / (自己)意識 / 内受容感覚 / 行為者性 / 感情 / かけがえのなさ / モラルラック / 道徳の起源 / 道徳的ジレンマ / 責任 / 道徳的行為者 / 知的ロボット / 共感 / 死 / 道徳帰属 |
Outline of Research at the Start |
人間は己の存在形態を正当化するために神話や宗教などを創造してきた。道徳において先鋭化するこれらは、人間を取り巻く自然条件によって偶然に枠組みが定められたものであり、条件が変容すればその内容は根底的に変わりうる。現在、様々な技術が人間の心理的身体的能力を拡張し始めると伴に、人間を凌駕する知的ロボットが創造されつつある。我々はこうした事態を自然条件の大きな変容の始まりと捉え、未来に向けた提言が必要と考える。そこで本研究は、ロボット工学や心理学などの経験的手法を取り入れつつ、ロボットのような新たな存在を道徳的行為者として受容できる社会にむけた新たな道徳理論の主要テーゼを導出することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究成果を理論編と実証編にわけて報告する。理論編:ロボットが弱さや傷つきやすさを装備するための原理的な装備が(自己)意識であることを論理的に導出した。またそれが、感情に関する脳科学的な研究において新しい文脈で解明されつつ内受容感覚、そして自己受容感覚と密接に関わっている、という仮説にたどり着いた。感情の脳科学と哲学との協働によって、ロボットの存在論的道徳的な位置づけをあきらかにする可能性が開かれたことは特筆に値する。また、価値と合理性に関するパラドックスを形而上学的なアプローチにより考察することによって、人の存在の圧倒的な個別性(かけがえのなさ)を擁護し、これをロボットのもつ道徳的行為者性と結びつけて考察する手がかりとした。今後の研究の展開の方向性に関係する成果である。さらにロボットが道徳的行為者になるためには単に善悪のルールに従うだけでなく、人間とともに新たな道徳を作っていく能力をもつ必要がある。そのためには、道徳概念を創発するための基礎概念と概念創発の仕組みが装備されねばならない。そのような道徳的行為者性には、部分から全体を作る創発的な階層性と、概念の木構造を作る階層性の2つが必要であることを論じた。実証編:自律性を増したロボットが人間と同質の主体性を持った場合に、人間はその主体をどのように評価するかを明らかにすることは本課題にとって重要である。トロッコ問題という道徳的なジレンマ課題の行為者にロボットを設定し、そのロボットが目の前にいる場合といない場合で、ロボットに対する人間の行為評価に違いがあることが明らかになった。また、道徳的意志決定に予期的後悔が関係するという仮説を設定し、それを皮膚コンダクタンスという身体反応で検証することを考えた。結果として、皮膚コンダクタンスは個人差が大きく仮説の検証には適さないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長滝、大平を中心として、リエカ大学(クロアチア)の心理学研究室を受け入れ先とした国際会議を開催した。当該大学の哲学者とも研究交流を行い、今後の共同研究の可能性について議論を進めることとなった。本科研による成果として、文献研究だけでなく、順調に実験を実施することができ、代表者によるアンソロジー出版ほか、論文、著書、国際学会を中心とする発表として多くのアウトプットが得られた。また、大平、金野を中心とする一連の実験研究による成果は、人とロボットやAIとの関係性を作るメカニズム構築にとって大きな進展となった。以上が、概ね順調に推移しているとした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
理論編の今後の計画は以下である。本課題の研究は、サイボーグや知的ロボットのような近未来的存在者を道徳的行為者として受容できる社会を構築するための新たな道徳理論の主要テーゼを提案することであった。だが、上記の存在者と人間の間には、圧倒的な能力格差が生じるはずである。そのため、AIやロボットが人間を支配し、滅ぼすといったダーク・シナリオを展開し、それに対処するために、技術革新のモラトリアムを設けるべきとの議論もある。これに対しては、意識、とりわけ自己意識を知的ロボットがもつことによって、解決の糸口がつかめるのではないかと予想している。自己意識をロボットに装備するための理論的な枠組みの構想もふくめて、自己意識と弱さの自覚といった問題と概念的・哲学的に論究する必要がある。 実証編の今後の計画は以下である。ロボットのような人工物に道徳的行為者性を実現するのに必要な条件を導出するために、人間とロボットとの相互作用実験を引き続きおこなう。これまでに身体運動を通じたロボットと人間のインタラクション実験を実施してきたが、近年の発展が著しい大規模言語モデル(LLM)を用いれば、対面するロボットとの自由な対話を実施することが可能である。その対話において、ロボットがどのような内容の対話を行なったら、人間は道徳性判断のジレンマ度合いを上昇させることになるのかを問う。さらに、「道徳的意志決定に予期的後悔が関係する」という仮説を検証するための新たな実験パラダイムを考案・実施する。また、自律神経の活動が、価値に基づく選択である意思決定や協調行動に関係することが大平らの研究で明らかになってきた。これを、ひととロボットやAIとの関係にまで展開するような実験パラダイムを構築し実施に移す計画である。
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