Project/Area Number |
19H00540
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 3:History, archaeology, museology, and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高野 信治 九州大学, 大学文書館, 協力研究員 (90179466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 聡美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00366999)
東 昇 京都府立大学, 文学部, 教授 (00416562)
中村 治 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 客員研究員 (10189029)
平田 勝政 鎮西学院大学, 現代社会学部, 教授 (10218779)
鈴木 則子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (20335475)
山田 嚴子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (20344583)
細井 浩志 活水女子大学, 国際文化学部, 教授 (30263990)
有坂 道子 京都橘大学, 文学部, 教授 (30303796)
福田 安典 日本女子大学, 文学部, 教授 (40243141)
大島 明秀 熊本県立大学, 文学部, 教授 (50508786)
小林 丈広 同志社大学, 文学部, 教授 (60467397)
丸本 由美子 金沢大学, 法学系, 准教授 (60735439)
藤本 誠 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (60779669)
瀧澤 利行 茨城大学, 教育学部, 教授 (80222090)
小山 聡子 二松學舍大學, 文学部, 教授 (80377738)
山下 麻衣 同志社大学, 商学部, 教授 (90387994)
吉田 洋一 久留米大学, 文学部, 教授 (90441716)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥44,850,000 (Direct Cost: ¥34,500,000、Indirect Cost: ¥10,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
Fiscal Year 2021: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2020: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
Fiscal Year 2019: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
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Keywords | 認識 / 生活 / 社会 / 障害表象 / 病気 / 障害認識 / 説話 / 保養 / 疾病 / 芸術 / 人権 / データ集 / 病観 / 生瀬克己 / 政治社会 / 文化宗教 / 生命医学 / 図像 / 精神疾患 / 障害 / 障害史研究 / 病因 / データ収集 |
Outline of Research at the Start |
近年、欧米では前近代をも射程に身心機能の損傷と社会文化的に構築されたものという二つの局面を複合させて障害を捉え、人種、性(身体上)、民族の差異よりも、障害の有無が人間の区別・差別には重要とされる。 日本では、かかる視角の研究はなく、障害は近代の画期性が重視される。しかし福祉問題の将来が懸念されるなか、比較史的観点も踏まえた障害の人類史的発想に立つ総合的理解は喫緊の課題だ。以上の問題意識より、疾病や傷害などから障害という、人を根源的に二分(正常・健常と異常・障害)する特異な見方が生じる経緯について、日本をめぐり、前近代から近代へと通時的に、また多様な観点から総合的に解析する。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は三回の研究会と紀要『障害史研究』第4号を発行。通算第9回研究会の山下麻衣「援護法と更生医療」は、戦傷病者戦没者遺族等援護法が施行された1952年以降数年間を分析対象とし、戦傷病者への援護の一つである更生を目的とした医療提供の創出と適用過程を明らかにした(報告は紀要掲載)。第10回の真柳誠「日本の医薬・博物著述年表について」は、障害史データベース作成に資する目的のもので、中国・越(ベトナム)・韓(朝鮮)をめぐり年表化することで、著述分野と数量の年代変化が明晰化され、それと障害史との関連が問われた。第11回の藤本誠「日本古代における疾病・障害表現の基礎的考察―日中仏教説話集の比較を手がかりとして―」は、中国仏教説話における障害・疾病表現の一部を整理した上で、『日本霊異記』などの古代日本の仏教説話集をはじめとする諸史料への影響を考察した。 紀要には山下論考のほか、病院がない時期の精神障害者の実態(中村治)、前近代における治癒困難な病に重なる障害認識(高野信治)、病や障害の療養と生活への復帰という指向性を帯びる「保養」概念の形成(瀧澤利行)の諸論考からなり、奇しくも病と障害の関係を追求する充実した内容となった。加えて一貫した聾唖研究の一部としてその実態解析の重要性とともに教育の比較史を提言する論考(末森明夫)も掲載された。 さらに、前年度に引き続き、返還前の沖縄地方における精神障害者の処遇の調査、戦後の京都・岩倉における精神障害者開放医療(1970年以降)についての調査を通じ、精神障害者やその家族、地域の人による普通の暮らしとは何かが追求され(中村治)、またハンセン病者の人権を左右する隔離監禁主義と治療解放主義の相克過程の解明作業が1920~30年代の治療解放主義に注目して検討された(平田勝政)。 具体的な実績概要は、『障害史研究』の「活動報告」欄に記載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請書に即すれば、古代の疾病・障害関係説話の受容と流布に関する日本・中国の説話と説話集の比較の考察は藤本誠報告(第11回研究会)、戦傷病者などに焦点を当てた戦後日本の障害と医療の問題に関する研究は山下麻衣論考(『障害史研究』4号)、精神障害の実態調査については中村治の成果(後掲「研究発表」参照)、近代日本の人権保障施策の質的変化・課題の解明は平田勝政の成果(同)、さらに古代から中世において身体異常で生まれた子の扱いをめぐる実証研究は小山聡子『鬼と日本人の歴史』が関連し、本科研が設定する諸テーマに関する成果は着実に得られている。 データ集作成の作業も想定以上に進む。文献目録では障害と関連項目に関する近世近代の研究文献目録稿が科研メンバーで確認中、文化史(文学・民俗など)関連目録も作成中である。史料採録では、古代における日中の疾病・障害関係表現説話の史料目録の作成、『人権歴史年表』から時代を通覧した障害者関連項目の抜粋と新たな情報の追記などの作業も進めた。さらに、生瀬克己編『近世障害者関係史料集成』の掲載史料の偏在を見据え未掲載の孝子・随筆・刑罰史料を対象とした資料目録の作成も進める。 また、小山聡子(上智大学キリスト教文化研究所第49回連続講演会)は日本の古代から中世にかけて障害児がいかに扱われたか明らかにし、山本聡美「発心の図像―中世絵画に描かれた闇」(国文学研究資料館「ないじぇるワークショップ」)は、日本の中世絵画において障害などの表象が発心にかかわる経説と結びつくことで積極的な意義を有する事例を紹介、鈴木則子『近世感染症の生活史 医療・情報・ジェンダー』は江戸時代の慢性感染症と急性感染症の後遺症として視覚障害が残ることなどを指摘した。これら分担研究者はメディア発信もし、地道な研究が社会的に意義深い成果であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、それに応じる研究推進が必要となる。 第一に、作成中のデータ集を踏まえた研究成果の提示である。具体的には、①2020年度より進めてきた古代仏教説話データ目録作成の成果を踏まえ、『日本霊異記』などの仏教説話集や、『東大寺諷誦文稿』などの法会関係史料における障害・疾病表現に影響を与えたと考えられる、中国仏教説話の構造と表現の分析、②「一遍聖絵」各段に描かれた疾病・障害図像の一覧を作成を踏まえ、遊行する一遍の傍らに疾病や障害を持った人々の集団が描かれることに、単なる救済対象としての意味ではなく互いを善智識とした互恵的関係性が表現されていることの考察、などである。 第二に、障害の多義的な性格とその変容に関する解析である。いわゆる「鬼子」をめぐり、福田安典は山田嚴子の立論を踏まえ、福子と鬼子、鬼子母神が持つアンビバレントとでもいえる性格を示唆した(『障害史研究』4号の「研究短報」欄)。また、丸山由美子は視角の違いによる障害の捉え方の多様性について法制史と医学史を踏まえ提起する(同)。これは障害の認識のされ方と史料への表れ方にも繋がる問題だろう(『障害史研究』1号の高野信治論考)。障害概念が近代に成立したとすれば、前近代における認識のされ方が近代へどのように継承ないし断絶するのかは、考慮すべき問題だろう。 以上の二点は、企画中の研究書である障害史研究会編『障害史へのアプローチ ―認識・生活・社会・表象― 』(仮題)の諸論考で、多面的に検討される。 第三に、現代社会における障害の意味の再考である。山本聡美の企画ワークショップ《アートがつなぐ、ソーシャルインクルージョンの実践》(早大)は、障害のあるなしにかかわらないアートを介した共生社会を考える機会となった。このような現代的視点からの研究も必要だろう。
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