Project/Area Number |
19K00341
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
吉森 佳奈子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10302829)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 『河海抄』 / 『花鳥余情』 / 『河海抄類字』 / 『湖月抄』 / 『源氏物語玉の小櫛』 / 『一代要記』 / 南葵文庫 / 花廼家文庫 / 『帝王編年記』 / 紀州和歌山藩 / 『源氏物語』 / 『三教指帰』 / 「日本紀」 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、虚構の物語作品の享受史が同時代の歴史認識の形成に深く関わっているという独創的な見通しを基盤とし、従来注目されることのなかった資料の文献学的な精査も併せ、発展的に研究を行うことで、日本文学、日本歴史、日本思想史の各分野に新たな創造的視点を提示することを目的とする。 近時、『源氏物語』注釈書類は海外でも注目を集め始めている。日本の文化的な資産がグローバル化された世界の学問レベルで注目を集めようとするときに、入念な基礎研究に支えられた独創的な視座を示すことは重要な責務であり、本研究は、そうした貢献を行ってゆくことを目ざして企図されたものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究成果をふまえ、基礎研究に力を注ぐ一方、研究の最終年度である次年度以降への継続性を確保すべく、より発展的な視座を得ることを目ざした。 『河海抄』の複雑な異文状況が、同時代の歴史認識の問題と不可分に生じたものであることを解明する研究として、本研究課題においては、従来注目されてこなかった『河海抄類字』をとりあげ、事業期間全体をとおして研究してゆく計画をたてているが、国立国会図書館、宮内庁書陵部、東京大学総合図書館の資料複写提供の協力を得て研究を進め、論文「近世の『河海抄』」を執筆し、学会誌に投稿、現在査読中である。この論文は、本研究期間における当該テーマにかんする第一論文「『河海抄類字』について―『河海抄』のゆくえ―」(『国語と国文学』2020年6月)の研究成果をうけ、とくに、近世期の、藩の学校をふくむ学問世界において、『河海抄』が無視できない役割を担っていた可能性について考察を深め、『源氏物語』注釈書として終焉した後、この書がどのように生きたかという問題を、当時の出版状況等にも目くばりしながらあきらかにすることをこころみたものである。 藩の学校は、従来の研究では、現在に伝えられる当時のカリキュラム的なものに照らして、漢籍が学修の中心と考えられてきた。そのなかで、虚構の物語作品の注釈書である『河海抄』が役を果たしていたことを、『河海抄類字』の存在から具体的に究明し、その検証として中世の教養の基盤を問いなおす研究に向かった成果が、「漢字世界のなかの『源氏物語』注釈」(三国志学会編『三国志論集』2023年9月刊行予定)である。 これらの研究をとおして、『河海抄』および『河海抄類字』が、日本文学のみならず、史学、教育学の分野にも資する重要な資料であることを提起しながら、その生きた空間を具体的に問う研究を、研究の最終年度に向けて継続してゆく見とおしを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、①『河海抄類字』にかんする研究、②『河海抄』の諸本研究と、翻刻出版に向けての本文選定のための研究、③『源氏物語』注釈史と、官撰国史断絶後の歴史記述の接点にかんする研究、の、具体的な三つのテーマをたて、本研究課題を進めてゆく計画で研究を行った。 ①にかんしては、『河海抄類字』の存在に注目し、近世の学問空間を問い、『源氏物語』注釈書としては終焉していた『河海抄』が生きた道すじを考える研究を行い、論文を執筆した。この研究をとおして、従来、私的な手控が偶然残ったものとして顧みられることのなかった『河海抄類字』について、注釈史の問題のみならず、学問空間の問題として捉えなおす視座を得、研究の最終年度に継続してゆく視座を得た。 『河海抄類字』が、『河海抄』の諸本研究にかんしても重要な役割を担っている可能性について見とおしを得たことは、②の研究とのかかわりを確保しながらさらに深めてゆける手ごたえともなっている。①の成果をふまえながら、とくに従来、価値の低いものとして注目されることのなかった、近世末期の転写本に注目し、その享受空間をあきらかにすることをこころみている。出版文化のなかで『河海抄』写本の生きた空間と、その意味を問う研究は次年度も継続してすすめる。具体的には、現代に伝えられる『河海抄』の写本が近世末期書写のものに偏る問題について考え、文献学的に新たな視座の提起を目ざす。 さらに、③の、歴史記述との接点については、①の成果をうけ、とくに近世末期の藩の学校で学ばれた歴史書類に吸収されているものを具体的に問いながら、そのなかで『河海抄』が『源氏物語』注釈書ではなく類書のように用いられていた可能性を考える研究を始発させつつある。研究の最終年度に向けて、さらに発展的に検証をかさねる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度である2023年度は、前年度までの研究成果をひきつづきながら、研究の総括として、従来の研究でとりあげられることのなかった問題に、資料の精査をとおして注目し、常識を問いなおすことで、新たな視座の提案を行うことを目ざしたい。 研究の第一として、前年度の研究にひきつづいて『河海抄』の諸本研究を行う。具体的には、『河海抄類字』への注目が、これまで低い評価しか与えられてこなかった近世末期に転写された『河海抄』の意味づけを変え、文献学的研究の発展に大きな意味を担い得ることを提起してゆく。 その成果を承け、研究の第二として、『河海抄類字』への注目が、『河海抄』の文献学的研究にとって意味があるというばかりでなく、日本思想史の分野にも新たな方法論の提起となり得ることを具体的に検証してゆく。近世思想史では、史書や漢籍中心の学問空間として捉えられていた士族階級の教育に、『河海抄』が、物語注釈としてではなく、簡便な類書として深くかかわっていたことについて研究する計画である。 さらに、研究の第三として、開板された『源氏物語』注釈書とのかかわりについて、前年度までの研究成果を承け、また、『河海抄』の写本が近世末期にまとまってあらわれることの問題性を問いながら検証をすすめてゆく計画である。この研究が、文献学の伝統的な方法に基づき、伝えた人や家に注目しながらすすめられてきた従来の諸本研究にたいして、新たな視座の提起となる見通しを得ている。一方でそれは、『河海抄』所引の歴史記述に注目し、物語が歴史によって注釈されることの問題性と、その具体的な享受空間のひろがりを考える研究にも繋がる。 なお、研究の最終年度である2023年度には、これまでの論文投稿のかたちでの報告をさらに進め、単著刊行をとおして本研究の成果を問うことを計画している。
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Report
(4 results)
Research Products
(4 results)