地域に固有の言語があり、その言語で表現された文芸作品が存在するにもかかわらず、ブルターニュ文学はフランス文学史の中で正当に評価・認知されているとは言い難い。その主たる要因として、言語とナショナリズムの問題が分離独立運動という政治的な様相を呈したこと、第2次世界大戦下のナチスとの関係が指摘されていること等が挙げられる。本研究は、19世紀後半から20世紀前半までの間で、ナショナリズムと結びついたブルターニュ出身の作家、特にブルトン語で作品発表を行った作家たちの調査を通して、同地方のナショナリズムと文芸運動の関係を明らかにし、この時代のブルターニュ文学の特徴や輪郭を描き出すものである。
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