演劇の近代化をめぐる鴎外の活動(翻訳・改作・創作)を総合的に研究するには、ドイツ留学時における演劇研究や観劇体験ばかりでなく、世紀転換期ヨーロッパにおいて展開した上演芸術としての演劇の総合性回復の運動、心理描写を重視する一幕物の流行、詩学と文献学を融合化する動向、さらに日本における新劇運動の台頭、標準語制定の動きなど、それらが複合的に鴎外の演劇活動に作用している局面を再構成しなければならない。演劇の分野における鴎外の活動はもともと国際的な広がりを持つものであり、本研究は鴎外研究をそのような本来の場面へともたらし、成果をドイツ語等で発信、海外の関心を呼び起こすことを目指す。
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