様々な文化財に使用された彩色材料への赤外線画像による面的調査の検討
Project/Area Number |
19K01136
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03060:Cultural assets study-related
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties (2020-2022) Kyushu National Museum (2019) |
Principal Investigator |
秋山 純子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 室長 (10532484)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2019: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 赤外線画像 / 彩色調査 / 面的調査 / 彩色材料 |
Outline of Research at the Start |
赤外線は可視光線よりもエネルギーが弱く非常に安全な光である。また、デジタルカメラで簡便に時間をかけず撮影が可能である。そして非破壊で面的な情報を得ることができる。以上の利点に注目し、膠と顔料・染料で描かれた絵画を中心に赤外線画像を検討した結果、顔料・染料の違いを見分けることができ、面的な広がりを捉えられることが分かった。そこで本研究では、絵画作品だけでなく、歴史資料や染織品などの文化財に対しても赤外線画像による調査が有効であるかを検討する。赤外線画像の適用事例を増やして、簡便かつ安全な調査法として確立することができれば、文化財を「活用」する際の情報提供に役立てることができると考えられる。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は様々な文化財に使用された彩色材料の面的調査に赤外線画像を適用し、その有効性を明らかにすることである。本研究では歴史資料や浮世絵などの刷物、染織品等に使用された彩色材料に対して、赤外線画像を使った調査が有効であるか検討を行う。赤外線画像の適用事例を増やして、簡便かつ安全な調査法として確立することができれば、文化財を「活用」する際の情報提供に役立てることができると考えられる。そのためには赤外線画像で何がどこまで分かるのかをしっかりと押さえ、様々な文化財に対し赤外線画像の検証を重ねていく必要がある。 今年度は昨年度調査を開始した九州国立博物館所蔵の染織作品を対象に科学分析を実施した。調査対象は沖縄で製作された一枚布の紅型である。紅型は花鳥風月が鮮やかに描き出され、顔料と染料をふんだんに使用している点が大きな特徴となっている。 昨年度は九州国立博物館所有の高精細スキャナ―を使ってカラーおよび赤外線画像1200dpi近い高画質で撮影し、染織品に対しても赤外線画像を利用した面的調査は有効であると示唆された。今年度は赤外線画像で得られた情報をもとに蛍光X線分析、可視分光分析、顕微鏡観察を行った。紅型の科学調査を通して、赤外線画像で濃灰色に写っている青色箇所から鉄が検出され、分光スペクトル分析および顕微鏡観察の結果と合わせてプルシアンブルーの使用の可能性が高いことを明らかにした。 また、これまで調査を進めてきた歴史資料「博物図譜」に関して、新たな調査手法でのアプローチを試みた。ハイパースペクトルカメラを使い、赤外線画像と分光スペクトルの分布とを比較し、赤外線画像の有効性をより詳しく検討できるか調査を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は本研究の4年目に当たる。今年度は九州国立博物館所蔵の染織作品に対して科学調査を実施した。調査対象は昨年度赤外線撮影を実施した沖縄で製作された一枚布の紅型である。紅型は顔料と染料の両方を併用した彩色技法を持つため、同じ色鮮やかな色彩であっても、赤外線画像には白く抜ける箇所と黒く写る箇所が確認された。そこで今年度は得られた赤外線画像をもとに蛍光X線分析、可視分光スペクトル分析、顕微鏡観察を行い、顔料と染料の使い分けを科学的に調査した。 今年度実施した科学調査の結果と合わせて、染織作品においても彩色材料によって赤外線画像の写り方に違いが生じることが分かった。しかし、赤外線画像だけでは彩色材料の特定は難しく、点分析と組み合わせることが必要である。どの箇所を点分析するかを検討する際に赤外線画像による面の情報は有効であることが明らかとなった。 また、これまで調査を進めてきた歴史資料「博物図譜」に関して、新たな調査手法でのアプローチを試みることができた。ハイパースペクトルカメラは平面をスキャンして面的に分光スペクトルを得ることができる装置である。ハイパースペクトルカメラを使い、赤外線画像と分光スペクトルの分布とを比較することで、赤外線画像の有効性をより詳しく検討できるか調査を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の最終年度に当たるため、これまで調査した歴史資料「博物図譜」の赤外線画像と合わせて、分析結果をまとめる予定である。そのため、今年度から新たに実施したハイパースペクトルカメラでの調査を次年度も実施し、そこから得られる結果と赤外線画像との比較から、赤外線画像の面的調査の有効性をさらに検証したいと考えている。 また、昨年度得られた紅型の赤外線画像は3点あり、そのうち2点の染織品に対して赤外線画像を解析し、顔料・染料の使い分けを蛍光X線分析、可視分光スペクトル分析、顕微鏡観察を実施して、染織作品に対する赤外線画像の有効性を検証することができた。 その結果をもとに、残り1点の染織作品についても同様に来年度調査を進める予定である。さらに染織作品の調査を進めるにあたりハイパースペクトルカメラを適用することで、本研究における染織品もしくは染料の調査分析を発展させ、赤外線画像の有効性を検証したいと考えている。
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Report
(4 results)
Research Products
(4 results)