これまで戦前期商社の人事システムを分析し、従業員の過半を学卒者(高等教育修了者)が占める人員構成や、処遇における学歴格差の稀薄さという特徴を発見した。その原因として従業員による内部不祥事に注目し、明治36年~第2次大戦期の三井物産の社報を検討した結果、不祥事には学歴による偏りが存在し、学卒者の規律意識の強さが明らかになった。今回の課題では三井物産の明治創業期~大正初年の重役会議事録を分析すると共に、件数は少ないものの長文の報告書が残る兼松や、従業員の不祥事によって突然に経営破綻した古河商事のケースも加えて、不祥事が経営組織に及ぼした負のインパクトの実態などを解明したい。
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