IBSのストレス性増悪因子としての直腸粘膜下血管機能異常
Project/Area Number |
19K08426
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 53010:Gastroenterology-related
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三井 烈 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (90434092)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 微小血管 / 消化管 / 交感神経 / NO神経 / 血管平滑筋 / 副交感神経 / capillary / pericyte / prostaglandin I2 / endothelial cell / arteriole / vascular smooth muscle / sympathetic nerve / nitrergic nerve / 細動脈 / 毛細血管 / 直腸 / プロスタグランジン / 収縮 / 知覚神経 / 血管拡張 / ストレス / ペリサイト / 自律神経 |
Outline of Research at the Start |
過敏性腸症候群(IBS)の患者ではストレス負荷時の直腸粘膜血流の減少が遷延することから、直腸循環障害の存在が示唆される。IBSでは知覚神経の閾値低下が起こるため、血管に分布する知覚神経の過活動により血管が収縮し、虚血によりさらに知覚神経が刺激される悪循環が仮定される。 本課題では、直腸粘膜下細動脈の神経性(交感神経、知覚神経、壁内神経)制御機構と血流を促進する自発活動(自発収縮、Ca2+上昇)について検討する。正常ラットおよび、IBS様の症状を呈する直腸知覚過敏モデルを用いた検討を行い、病態における変化を明らかにする。IBS患者のストレス性増悪を直腸血管機能異常の視点から捉える研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
過敏性腸症候群(IBS)の患者では心理的・物理的刺激に対する直腸粘膜血流低下反応が、健常者と比べて長引く。このことから、IBS患者の直腸血管を支配する交感神経による過剰収縮が示唆される。粘膜血流の低下による低酸素状態は、血管周囲の知覚神経を過剰に興奮させ、直腸知覚過敏に伴うIBSの諸症状を引き起こすと推察される。 これまでに本課題において、IBS様の直腸知覚過敏が報告されているwater avoidance stress(WAS)負荷ラット(以下WASラット)を用いて、直腸細動脈での交感神経性収縮の亢進を見出した。また、正常ラットにおいて細動脈周囲の一酸化窒素(NO)含有神経(NO神経)線維が、並走する交感神経線維に対して抑制作用をもつことも示唆した。今年度は、「WASラットの直腸細動脈においてNO神経の機能が減弱し、交感神経性収縮が増強されている」という仮説を支持する以下のような結果を得た。 対照群の直腸細動脈では、交感神経性収縮は、神経性一酸化窒素合成酵素(nNOS)阻害剤L-NPAにより増強され、cGMP分解酵素であるphosphodiesterase 5(PDE5)の抑制剤tadalafilで減弱した。これらの結果などから、神経由来のNOが交感神経に作用してcGMPの産生を介して交感神経性機能を抑制していると考えられた。一方、WASラットでは、交感神経性収縮に対するL-NPAの効果は消失し、tadalafilの効果も減弱していたことから、NO神経機能の低下が示唆された。NO神経は、choline acetyltransferaseを発現しており、副交感神経であると推察された。 結論として、WASラットにおいて副交感神経からのNO放出が減弱し、交感神経に対する抑制作用を失うことで、直腸細動脈の交感神経性収縮が増強されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までに、直腸毛細血管の研究は、論文として発表した(Mitsui et al. J Physiol. 2023 601:5213-5240)。直腸細動脈の制御機構についても解明が進み、IBS様モデルラットにおける直腸細動脈の神経性制御異常に関しても一定の成果を得たため、「おおむね順調に進んでいる」と自己評価した。進行中である細動脈関連の実験に関して、具体的な方法および、今年度の実験結果を以下に示す。 【方法】ラット直腸粘膜下層標本を作製し、標本内の細動脈をビデオカメラで撮影した。血管壁追跡ソフトを用いて血管径の変化を経時的に記録した。 【結果】WAS(1日あたり1時間、計10日間、周囲に水を張った島の上で身動きがとれなくなるストレス)を負荷したラットの直腸において、経壁神経刺激による交感神経性の細動脈収縮反応が亢進していた。この収縮反応は、対照群では神経性一酸化窒素合成酵素(nNOS)阻害剤L-NPAにより増強され、cGMP分解酵素であるphosphodiesterase 5(PDE5)の抑制剤tadalafilで減弱した。一方、WASラットの直腸細動脈における交感神経性収縮は、L-NPAで増強されず、またtadalafilによる抑制効果も低下していたことから、WASラット直腸細動脈においてNO神経の機能低下により交感神経の過剰興奮が引き起こされていることが示唆された。 なお、免疫染色により直腸細動脈周囲のNO神経は、choline acetyltransferase(アセチルコリン合成にかかわる酵素)を発現していたことから、副交感神経であると推察された。WASラット直腸細動脈では、交感神経に拮抗する副交感神経性のNO放出が減弱することにより、交感神経性の収縮が増大していることが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
WASラットにおける直腸細動脈制御異常の研究については、論文を投稿中であるが、返ってきたレフリーコメントにしたがって、今年度は追加実験を行う。WASラットおよび対照群のラットを作製し、それぞれの直腸細動脈における内皮機能を比較する。直腸細動脈をアルファアドレナリン受容体アゴニストphenylephrineで収縮させ、アセチルコリン(100 pM-30 μM)誘発性血管拡張に関する濃度-反応曲線およびEC50を両群間で比較する。また、経壁電場刺激による細動脈収縮が、WAS群およびコントロール群においてともに交感神経性収縮であることを、定量的に評価、確認する。この実験には、神経伝導遮断薬tetrodotoxinや交感神経伝達物質枯渇剤であるguanethidineを用いる。 ほぼ最大反応がみられる1 μMアセチルコリンによる血管拡張反応は、両群で差がないことを確認済みであるが、EC50が変化している可能性もあるためより詳細に内皮の障害の有無を評価する。両群間でアセチルコリンによる血管拡張反応に差が無い場合は、NO神経の機能低下がWASラットの直腸血管における交感神経性収縮を増大させていると結論づけられる。
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Report
(5 results)
Research Products
(17 results)