水俣病の「記録」と映像表現―社会・自然・メディア環境との非言語的対話について
Project/Area Number |
19K12989
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Fukuyama University (2023) Nagoya University (2019-2022) |
Principal Investigator |
洞ヶ瀬 真人 福山大学, 人間文化学部, 准教授 (10774317)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ドキュメンタリー / メディア史 / 環境問題 / 公害 / エコロジー / 映像表象 / 映像倫理 / 公害・環境問題 / 記録 / 水俣病 / 四日市ぜんそく / 映像表現 / 石牟礼道子 / 放送文化 / 公害問題 / 記録映像 / 社会運動 / 映像メディア表現 / 環境倫理 |
Outline of Research at the Start |
水俣病報道の始まる1950年代末から、68年の厚生省公害認定を経て、補償訴訟が社会問題化する70年代初頭までの時代に水俣病を記録してきたテレビ番組、映画、写真、文学での映像表現を本論の研究対象とする。 様々なメディアが横断的に結びつくような展開を見せた水俣病表象文化の特徴に着目し、ドキュメンタリー映像作品だけでなく、石牟礼道子の文学や桑原史成、ユージン・スミスの写真表現などにも映像との関連から研究する。 主な主題として①テレビと映画における水俣病描写の比較、②水俣ドキュメンタリーと石牟礼文学の関係性、③スミス写真集や、『苦海浄土』初版に見られる言葉と写真のモンタージュ表現、の三つに取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまで未実施の研究課題に加え、水俣病以外も対象にした研究を以下のように進めた。まず、水俣病の映像記録に目立つ水銀中毒を抱えた当事者の姿に着目し、これを障害学の知見を参考に、障害者表象の観点で分析する研究を行った。この中で当初は、著名な土本典昭の作品などを検討していたが、NHKアーカイブス学術利用トライアルを利用した調査で同局が、土本が水俣に取り組む以前の映像記録を保有していることが分かった。また、その内容を調べたところ、NHK九州管区で制作・放送された「話題を追って 救いをまつ心身障害児」と題する、水銀障害を抱える児童や漁民の救済をテーマにした番組だと判明した。その内容は、被写体となる児童との親密な関係が映像から伝わるもので、早期から水俣病の惨状を捉えてきた写真家・桑原史成の作品にも通じる点が数多くみられた。日本メディア学会で行った研究発表では、これを土本や桑原などの作品とも比較しながら、早期の障害者表象として評価する議論を行った。この研究は、日本のドキュメンタリー史だけでなく、障害学に対しても新たな知見になると思われる。 次に、NHKが1960ー70年代に制作していた公害被害に苦しむ漁民のドキュメンタリーを対象に、その表象の特徴について議論する研究を進めた。水俣病は漁民が主な被害者となった典型例だが、同様の問題が日本中の工業地帯を擁する近海で1950年代から騒ぎとなっている。様々な地域に即してこの問題を記録したNHKの作品を対象に地域横断的観点から分析を行った結果、この時代の作品が、言葉で環境正義を叫ぶのではなく、音声と映像からなるドキュメンタリー表現を巧みに用い、視聴者に環境問題への関心を広く開こうとしていたという新たな知見が得られた。これらは、グローバル化する今の気候変動問題の議論で求められている、立場を問わず環境問題に向き合う共通意識の醸成に役立つと思われる。
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Report
(5 results)
Research Products
(11 results)