戦犯釈放の政治外交過程―国内の戦犯釈放運動と再軍備問題との連関に注目して
Project/Area Number |
19K13337
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
|
Research Institution | Meiji University (2022) Kyushu University (2019, 2021) |
Principal Investigator |
中立 悠紀 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員(客員研究員) (60829787)
|
Project Period (FY) |
2021-03-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
|
Keywords | 戦犯 / 戦犯釈放運動 / 戦争受刑者世話会 / 重光葵 / 岸信介 / アメリカ政府 / 再軍備 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、1952年のサンフランシスコ講和条約発効後における、戦争犯罪者の釈放過程を解明する。特に、①当時、日本国内で盛り上がっていた戦犯釈放運動が、関係国との外交交渉に与えた影響を分析する。また②主にアメリカとの懸案事項であった再軍備・MSA協定の締結に、戦犯釈放問題がどのように関わっていたのかも考察する。 この二つの分析は、日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどの外交史料などを用いて行う。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本政府の外交交渉や戦犯釈放運動勢力の工作が、いかに米国の戦犯政策に影響を与えていたのかを分析しようと試みた。その際に着目したのが重光葵と岸信介である。重光と岸は、1952年5月に発足した戦争受刑者世話会の理事を務め、それぞれ鳩山内閣と石橋・鳩山内閣で外相に就任した。戦犯釈放を訴えていた利益団体の理事を務めながら、外相となった重光と岸に着目することで、国内での要望がどのように外交交渉に波及したのか分析してみた。 1955年1月に、重光はアメリカ統合参謀本部議長のラドフォードと駐日大使のアリソンと会談し、「戦犯拘禁は日米協調を阻害し、東側の「戦犯」釈放宣伝を利する」と訴えている。巣鴨運営委員会の当時の議事録によると「重光外相は戦犯問題について極めて強い関心を持ち外務省に尋ねて来る外国使臣及要人に対し必ず第一に戦犯問題を持ち出し、斯る些細な問題が解決つかない様ではと強く言って居るとの事である」と、非常に期待されていたことも分かる。このように、重光は利益団体と戦犯の声を背景に、戦犯釈放に尽力したと言える。 重光の後を襲って外相になった岸は、1957年5月1日に駐日大使のマッカーサーと会談した際に、釈放問題への個人的な思い入れを表明し、「入居仲間」(FELOW INMATES)の釈放と、仮釈放中の行動制限をやめるよう要請した。また同月13日には岸の弟・佐藤栄作も同大使と会談し、戦犯問題を対中ソ関係上、日米協力を阻害する懸案事項であると述べ、特に木戸幸一、星野直樹、そして賀屋興宣について善処を求めた。米大使館側は、賀屋が衆議院選挙に出馬することを岸政権が期待していることを理解しており 、その政治的意図は気づいていたようである。 このように、世話会理事の重光と岸は、それぞれ利益団体・戦犯の声や、個人的な人間関係もあって戦犯釈放に尽力したと評価できるだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
米国政府内の政策決定過程が不明瞭であり、本来ならば米国に渡航して史料調査を行うべきであったが、新型コロナウィルスの影響もあって、調査が行えていない状況にある。ただし、日本側の史料と既に収集していたアメリカ政府・イギリス政府の外交史料の読み込みは相当に行えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
二〇二三年度の研究内容は、主に以下の二点とする。 1、日本政府の外交交渉や戦争受刑者世話会など利益団体の動きは理解できたが、これら日本側の動きが、いかに米国の戦犯政策に影響を与えていたのかがやや不明瞭である。例えば1955年4月9日に、アメリカ政府国家安全保障会議は、日本の中立化を警戒する観点から戦犯問題については仮釈放の迅速化で1956年初めまでに解決することを目標にするなどしているが、この政策転換と日本側の外交攻勢にどのような因果関係があったのか・なかったのかを分析する。2023年8月・9月にアメリカ・ワシントンに史料調査に行くと決定したので、アメリカ国立公文書館で外交史料の調査・分析を行う。 2、MSA協定と戦犯釈放問題の関連性について考察する。戦犯釈放運動勢力は、1953年10月には池田・ロバートソン会談での戦犯問題解決を訴えている(池田は会談前に世話会理事に就任している)。また国内ではMSA協定に戦犯の釈放規定を加えるように重光葵率いる改進党が日本政府・自由党側に訴えていたことも申請者の調査で分かっている。日本の再軍備(MSA協定)と戦犯の釈放に如何なる関連性があったのかを考察する。そのために外交史料館の外交史料や、アメリカ政府外交史料の分析を行う。
|
Report
(2 results)
Research Products
(2 results)