夜間多尿の新戦略:膀胱における知覚C線維を介した尿吸収を目指して
Project/Area Number |
19K18607
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 56030:Urology-related
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
大江 秀樹 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 医員 (70760510)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 夜間頻尿 / 抗コリン薬 / アクアポリン / 膀胱 |
Outline of Research at the Start |
下部尿路症状の中で最も生活に支障をきたす症状が夜間頻尿で、高齢者の多くにその症状がある。夜間頻尿の原因としては夜間多尿が最も大きな病因といわれている。
われわれの研究室では抗コリン薬が夜間多尿を改善し、尿産生リズムを夜型から昼型へ戻す可能性を報告したが、そのメカニズムは解明できていない。しかし、腎機能や内分泌系への影響は否定的で膀胱自体からの尿が再吸収される可能性が示唆される結果が予備実験から得られた。その機序として、細胞膜を通して水分子を移動させる水チャネル分子であるアクアポリン(AQP)が関与していると考えた。このAQPと膀胱における水吸収との関係性を解明するために本研究を計画した。
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Outline of Annual Research Achievements |
本邦で下部尿路症状を訴える患者は多く、中でも夜間頻尿は最も多い症状である。過活動膀胱治療薬である抗コリン薬は夜間頻尿にも有効であるが、中でも短時間作用型抗コリン薬であるimidafenacin(IM)は、第3相試験のサブ解析でプラセボ群と比較して夜間尿量を有意に減少させる可能性が示唆された。その検証として施行した動物実験では、ラット利尿モデルに対し投与した抗コリン薬(IM、tolterodine (TO))が尿量を減少させることを確認した。一方、ヒトにおいて就寝中100ml以上の尿が膀胱上皮から吸収されることも報告されている。そこで抗コリン薬が尿量を減少させるのは1)膀胱における尿再吸収、2)腎での再吸収、どちらのメカニズムに起因するのかを解明するために動物実験を行った。 1)膀胱吸収:膀胱注入した生理食塩水は膀胱から吸収されたが、吸収率は注入量の10%程度であった。0.3%生理食塩水を注入した時、Na+とCl-濃度は上昇したが、0.9%生理食塩水を収入すると共に減少した。各種抗コリン薬を用いても吸収率は一定であり、また電解質濃度、浸透圧の変化は抗コリン薬投与に関わらず一定であった。 2)腎吸収:0.9%生理食塩水を持続投与して2時間後、vehicle群では尿産生のピークが出現したが、IM、atoropine(AT)、TO、desmopressin(dDAVP)では用量依存性に尿産生が抑制された。また、IMとdDAVPにより腎皮質cAMPは有意に増加した。免疫組織染色において、利尿状態ではAQP2分子は腎皮質集合管の細胞質内に分布したが、IMとdDAVP投与により管腔側へ移動が認められた。さらに尿中AQP2排泄量はIMとdDAVP投与により増加がみられた。尿中のNa+排泄量を測定するとIM高用量で尿Na+は低下し、IMにより腎でNa+の再吸収が起こっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膀胱上皮を介する尿吸収メカニズムは存在し、またNa+やCl-も吸収されることが解明されたが、抗コリン薬による尿吸収促進に関しては否定的であった。 腎集合管での尿再吸収には主にAQP2が関与している。dDAVPが基底側壁部細胞膜に分布するvasopressin V2受容体に結合すると、adenylate cyclaseを介してcAMPが上昇し、protein kinase AによってAQP2がリン酸化される。リン酸化されたAQP2は細胞内から管腔側細胞膜上へtraffickingされ、その結果AQP2を介して水の透過性が上昇し尿量は減少する。本研究においてもdDAVP投与によりcAMPの上昇がみられ、AQP2のtraffickingから尿量減少が観察された。また、本研究では0.9%生理食塩水投与によりNa利尿を惹起しているが、皮質集合管からはNa+過剰に反応してacetylcholine (ACh)が放出され、AChがepithelial sodium channel (ENaC)のNa+吸収を阻害して利尿に作用するとの報告がある。さらにムスカリン受容体からのシグナルはAQP2の細胞質内への移動(internalization)を促進することで利尿に働くとされている。この生理食塩水負荷の状況下で本実験のように抗コリン薬を投与するとムスカリン受容体遮断からcAMPを増加させ、AQP2の管腔側細胞膜上への移動を促進した結果、抗利尿効果が発揮された可能性がある。抗コリン薬投与により尿Na+の排泄量が低下したのは、ENaCのNa+吸収を促進した可能性もあると推測された。
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Strategy for Future Research Activity |
膀胱上皮を介する尿吸収メカニズムは存在するが抗コリン薬による尿吸収促進は否定的で、抗コリン薬は腎皮質集合管のcAMP上昇、AQP2分子の管腔側への移動を介して抗利尿に働く可能性がある。またNaやClなどの電解質も再吸収される可能性が示唆された。 腎集合管におけるENaCの働きや抗コリン薬がどのムスカリン受容体サブタイプに作用しているか解明することが今後の課題である。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)