薄膜を駆使したキャリア注入型電子物性制御による水素化物エレクトロニクスの創成
Project/Area Number |
19K22225
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 36:Inorganic materials chemistry, energy-related chemistry, and related fields
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology (2020) Tohoku University (2019) |
Principal Investigator |
大口 裕之 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40570908)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2019: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 水素化物 / 薄膜 / キャリア注入 / 界面 / エピタキシャル |
Outline of Research at the Start |
本研究では、はじめに、超伝導を筆頭とする電子物性の発現が期待されるMH(Mはアルカリ金属や希土類元素)やM’H2(M’はアルカリ土類金属や希土類元素)などのエピタキシャル薄膜化を行う。その後、エピタキシーを駆使した結晶構造置換や界面設計、さらにはキャリア注入へと前進する。以上の研究によって、水素化物電子物性制御に関わる学理を追求し、水素化物エレクトロニクス実現へ向けた学術的基礎を整備する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、水素化物が示し得る水素由来の高温超伝導などの特殊な電子物性を創出する技術基盤として、水素化物薄膜へのキャリア注入の確立を目指している。ここでのキャリア注入手法は大きく分けて2通りある。ひとつは半導体キャリア濃度制御の定番手法である元素添加であり、もうひとつは酸化物超伝導体探索に際して開発された比較的新しい手法である電界効果トランジスター法である。そして昨年度は、キャリア注入の対象となるMgH2などの水素化物エピタキシャル薄膜合成の準備として、原料となるターゲットを作製した。さらに、合成済みであるBaH2薄膜の膜質を改良し、後者の実施に向けて研究土台を強化した。 BaLiH3およびMgH2薄膜合成用のターゲットとしては、BaLiH3およびMgH2の粉体を圧粉したφ20mmのペレットを作製した。MgH2粉末は市販のものを利用した。しかし、BaLiH3粉末は市販品が存在しないため、BaH2とLiHの粉末をモル比1:1で混合し、100分間メカニカルミリングを施して合成した。これらのターゲットには赤外吸収材として働くカーボンまたはSiの粉末を混合した。これによって、本研究の成膜手法である赤外蒸着法の根幹をなす、赤外レーザーによるターゲットを加熱・蒸発が可能となった。 BaH2薄膜の研究では、電界効果トランジスター法にふさわしい膜質を得る合成条件を明らかにしつつある。例えば、BaH2ターゲットに混合する赤外吸収材の混合量を調整するとナノレベルで平坦な膜が得られると分かった。また、反応ガス圧力を適切に設定することでBaH2相の成長が促進されることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画に比べて幾分研究進捗が遅れているのは、主に申請者の異動とコロナ禍による研究中断のためである。 申請者は昨年4月に東北大学から芝浦工業大学に異動している。そして4月には、異動に伴う実験装置の移設を予定していた。しかし、芝浦工業大学がある東京においてコロナ禍が広まり、緊急事態宣言の発令等により社会活動が制約を受けたため、実験装置の移設を7月まで待たねばならなかった。さらに、芝浦工業大学では現在まで入構可能時間が短縮されるなど研究活動が制限されている。 そのような状況であるが、申請者の主催する研究室が発足してから1年以上が経過し、12名いる所属学生たちの研究技量が向上したことから、最近になって研究進捗が改善されつつある。そして、学生たちが本格的に研究活動を開始した10月以降の約半年程度の短期間で、BaH2膜への水素欠損注入手法の探索や、BaLiH3粉末合成およびそれを使った薄膜合成用ターゲット作製といった、申請者が単独で実験を行っていた東北大学時代には構想にとどまっていた研究が形になりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間前半で注力するのは赤外蒸着法を用いたBaLiH3およびMgH2のエピタキシャル薄膜成長である。BaLiH3 は結晶構造としてペロブスカイト構造を取る水素化物であるので、BaLiH3エピタキシャル薄膜の成長には、同じくペロブスカイト構造を取るSrTiO3などの酸化物の単結晶基板を使用する。なお、水素化物ペロブスカイトのエピタキシャル薄膜合成に成功すれば世界初の成果となる。MgH2エピタキシャル薄膜成長は、スパッタ法によるMgH2エピタキシャル薄膜成長実績のあるMgOおよびTiO2酸化物単結晶基板上にて行う。 研究期間後半では、元素添加と電界効果トランジスター法の2通りの手法で、BaLiH3およびMgH2エピタキシャル薄膜へのキャリア注入に挑戦する。元素添加の際にはBaLiH3のBaサイトまたはMgH2のMgサイトを異価元素で置換する。つまり、キャリアとして電子を注入するには1価元素であるLi、K、Agなどにより、また正孔を注入する際には3価元素であるSc、Y、Laなどにより結晶サイトの一部を置換するのである。電界効果トランジスター法によるキャリア注入は、BaH2薄膜と水素化物エピタキシャル薄膜(BaLiH3やMgH2など)から成る界面で実施する。そして正孔を注入するには、電界を用いてBaH2側の界面にヒドリドを蓄積させ、水素化物エピタキシャル薄膜側に正孔を誘起する。電子を注入するには電界の向きを反転させる。 以上の研究と並行して保護膜の開発を実施予定である。湿気による水素化物の劣化を防ぐ保護膜が完成すれば、これまで大気非曝露でなければならなかった水素化物膜の評価を大気中で行えるようになるため、研究速度が著しく上がると期待されるからである。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)