戦後前衛書の他分野への展開:美術制度の周縁での受容
Project/Area Number |
19K23010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
向井 晃子 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (70848465)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 前衛書 / 日本近代美術 / 周縁 / 美術制度 / 戦後美術 / 伝統芸術 / 美術史 |
Outline of Research at the Start |
前衛書は、昭和初期にその萌芽があり戦後に興隆した新たな書の試みで同時代の美術とも交流した。しかし、書は明治期に設定された「美術」の枠外へ置かれていたため美術制度から周縁化された存在で、前衛書家の革新的な制作は書の主流からも疎外された。本研究は、そのような状況下で彼らが展開した制度外での活動とその受容を検討するために、モダニズム建築と協働した森田子龍と篠田桃紅の制作や、上田桑鳩の北海道滝川市での活動と活動内容の多様な展開と受容を調査し、彼らの革新的な制作が支えられた状況を考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、美術制度に支えられなかった戦後前衛書の支援者あるいは支援状況を検討し、欧米とは異なる歴史と文化がある日本近代の美術史の特徴を、制度外から逆照射するものである。今年度は、新型コロナウイルスの蔓延によって出張を伴う調査が難しく、電話による聴き取り調査、書面によるアンケート調査、文献調査、資料収集を行った。 聴き取り調査は、安芸市立書道美術館に上田桑鳩の作品を寄託している作品所有者に、作品所有の経緯と作品寄託時の状況、上田と作品所有者との関係について電話で聴きとり、記録を作成するとともに、数回、郵便による通信を行った。作品所有者は、上田の書簡も所有しておりその画像を提供をいただけたため、その分析と聴き取り調査により、上田と作品所有者の父親が、高知県在住の書家を介して上田の石の収集の趣味を通じ、知り合ったことが判明した。また、現在の作品所有者から見ると、上田よりも高知県在住の書家の存在が大きく、地方のネットワークによって上田が支えられ、作品保管にもその影響があることが明らかになった。次に、書面によるアンケートは、国立京都国際会館の設計者であった大谷幸夫の建築事務所で勤務し国立京都国際会館の現場にも携わった山本敬則氏に、質問書を送付し回答をいただいた。国立京都国際会館には、壁に組み込まれた形での篠田桃紅の作品が設置されており、前年度に現地調査を行っている。山本氏の回答は、前年度の国立京都国際会館での調査結果と矛盾せず、調査結果が裏付けられた。そしてこれらに関連する資料収集に努め、文献資料で調査結果を補った。それぞれ、美術制度の周縁での展開が判明したが、特に、上田の高知県安芸市方面とのつながり、石の収集を通じた展開といった地方でのネットワークが確認できたことが大きな成果であった。今後、北海道滝川市で行う予定の上田にまつわる調査とともに、地方での展開をさらに明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延により出張を伴う調査が行えず、延期となった。また、図書館等の公的機関へのアクセスも新型コロナウイルスの蔓延により著しく制限されたことの影響が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進にあたり、以下の方策を考えている。 1.今年度実施できなかった豊岡市、滝川市等への出張を伴う作品調査と関連資料調査、インタビュー調査の実施。2.今年度までの調査から得られた 上田桑鳩関係の新たな情報に基づく調査の必要性の検討と実施。3. 各調査の前後に、国会図書館や美術情報センター等で補足の資料調査を行う。 また、新型コロナウイルスの影響について今後の見通しが不透明であることを踏まえ、今後の推進方策として以下の対応を検討している。 1.新型コロナウイルスの感染状況等の情勢を踏まえて訪問調査先と十分相談し、無理のない訪問調査を計画することを心がけ、研究期間の延長も視野に入れて日程調整を図る。2.インタビュー 調査は、Webを使用したインタビューの実施、あるいはメールや書面等、文書によるアンケートでの代替も検討する。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)