革命から保守へ、その分水嶺を探る――後期ロマン主義における「フォルク」の意義
Project/Area Number |
19K23031
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0101:Philosophy, art, and related fields
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
須藤 秀平 福岡大学, 人文学部, 講師 (40847406)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
|
Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | ゲレス / フランス革命 / 公開性 / 世論 / 公共圏 / フランス革命史 / 保守主義 / ロマン主義 / 保守革命 / フォルク |
Outline of Research at the Start |
本研究は、これまで政治的反動とみなされ、正当に評価されてこなかったドイツ後期ロマン主義を、文芸活動を通じて「フォルク」の意志を政治的領域に取り込もうとした運動として新たに定義し、それが教養市民による政治的公共圏とは別の機能を持ちえたことを示す。そのために、反動的ロマン主義者とみなされる思想家・ジャーナリストのヨーゼフ・ゲレス(1776-1848)を対象に、革命的立場から保守主義への転換点を探ること、またその保守思想の意義を歴史的に解明することを目的とする。それらを通じて、ゲレスの特殊なフォルク観を明らかにし、従来指摘されてきたナチズム的ドイツ民族主義とは別のフォルク像を示す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀末のドイツ語圏において革命思想がどのように共有されていたかを調査するため、当時のジャーナリズムと世論をテーマに研究を進めた。収集した資料のうち、ヨーゼフ・ゲレスのテキストおよび1790年代のラインラントにおけるジャコバン派の新聞の読解に注力し、特にゲレス『赤新聞』(1798)から、彼の特殊なジャーナリズム活動のあり方を分析した。すなわち、同時代にプロイセンではカントが「公開性(Publizitaet)」という概念を提唱し、それにより政治と道徳の一致を図ろうとしていたのに対し、ラインラントのゲレスは同じ「公開性」という理念にもとづきながら、当地を占領するフランス行政局の不正を「公表」するという実践的なジャーナリズムをおこなっており、その点が当時のドイツ語圏において特殊であると言える。この成果について、日本独文学会西日本支部研究発表会で発表した。 加えて、同テキストより、ゲレスが当地での「世論」の代表者を自任できていないこと、むしろ敵対勢力を優勢とみなした上で、それに対し「公的精神」という倫理面に訴えることで対抗しようとしていたことを発見した。これはゲレスの「公衆」に対する葛藤を示すものであり、「世論」という言葉でしばしば一括りにされる当時の政治的言論の差異を明らかにするための一助となりうる。これについて、日本独文学会西日本支部の会誌に寄稿するための論文を執筆中である。 ただし残念ながら、20世紀の保守革命に関する基礎文献であるRolf Peter Sieferle: Die Konservative Revolutionの翻訳および分析の計画は、新型コロナウィルス感染症の影響で研究会がすべて中止になったことにより予定通りに進まなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲレスの思想のみならず具体的なジャーナリズム活動に目を向けたことにより、ゲレスが当時一方では啓蒙主義の立場で革命思想を支持しながら、他方では「啓蒙」や「真実」という言葉で語られたものの中に差異を見出し、その一部に対し強く反発していたことを発見することができた。これは18世紀末の啓蒙主義や革命思想を捉え直すための新たな視座となりうるものである。結果として当該年度内に論文を発表することはできなかったが、ゲレスの特殊なジャーナリズムの理論と実践については、学会発表および福岡大学内での研究チーム発表を経て、より詳細な分析が可能になった。 また、1920年代ドイツで成立した「新聞学」の言説についても並行して調査をおこなったことで、ゲレスの受容史に関する重要な着想を得た。これについても未発表であるが、今後形にすることで、先行研究が乏しいゲレス研究に基礎研究として貢献したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
ゲレスのジャーナリズム活動における「公開性(Publizitaet)」の理念と実践について、同時代のテキストと比較することで、その特殊性を明らかにする。加えて当時の「世論(oeffentliche Meinung)」概念に関して代表的なゲオルク・フォルスターのテキストとの比較から、ゲレスが「世論」と革命の関係についてどのように捉えていたのかを導き出し、これらを整理することで論文の完成を目指す。 また、昨年度におこなったフランス革命史に関する調査結果にもとづき、18世紀後半におけるドイツ人のナショナル・アイデンティティ形成に関わる言説を分析し整理する。ここから当時のドイツ的ナショナリズムや、革命思想および保守思想の流入の実状についてまとめ、日本日独協会で発表する。
|
Report
(2 results)
Research Products
(2 results)