日本中世の訴訟手続における適正さの観念と本所の機能
Project/Area Number |
19K23149
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0105:Law and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒瀬 にな 東北大学, 法学研究科, 助教 (70844843)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 日本中世法 / 訴訟手続 / 院政 / 本所 / 人的紐帯 / 公式・非公式 / 身分編成 / 公武関係 / 法制史・法史学 / 日本中世(平安・鎌倉期) |
Outline of Research at the Start |
日本中世においては、当事者・関係者が然るべき申請ルートを有することが訴訟の前提となっていた。代表的な申請経路は「本所」(帰属先たる荘園領主等)であり、本所の保護を受けることは正当なものとして主張された。 だが、保護を受ける根拠を、保護者(ここでは本所)の管領範囲内にあること即ち帰属に求める発想は、必ずしも普遍的ではない。人々の間の社会的紐帯は多様な形態を取りうる上、それらの認識のされ方も多様でありうるからである。 これらの点を踏まえ本研究では、当時の人々の秩序認識とりわけ〈とられるべき(正しい)手続〉に関する観念のあり方を、〈訴訟の場面において人的紐帯に付与される意義〉に着目して問い直したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、(1)前年度からおこなってきた、院政期訴訟の分析方法に関する検討をさらに進め、論文として公表した(後掲:黒瀬「日本中世訴訟研究における『属縁主義』:学説史と展望」)。本論考では、研究概念としての「属縁主義」および「本所法廷主義」の両者の関係につき、法廷選択の正当性という観点から分析するならば、両概念は重複する部分を有するのと同時に、説明対象に関する問題意識の点で大きな相違が存在することを指摘した。その上で、紛争当事者 による所縁構築運動(寄進・寄沙汰・寄人化など)の意義を〈法廷選択の正当性・正則性〉の観点から再検討する必要性について提起した。 (2)また、(1)の成果を踏まえつつ、鎌倉時代の御家人制に関する諸研究を検討した。これは、訴訟における人的紐帯の法的意義という本研究の課題意識からすると、貴族や寺社に関わる人間関係を中心に扱ってきたこれまでの研究代表者自身の研究にとって、それらと密接に関わりつつも独特の性格をもつ武家の人的編成を視野に収めていくという意味がある。本年度では現在の研究状況のおおよそを把握することができたので、今後はより詳細に検討していく予定である。 (3)これら上記の過程で、他の研究者から意見を寄せられる機会を得、鎌倉幕府および鎌倉時代の訴訟研究において、「公権力化」や「当事者主義」といった概念ないし指標をどのように用いるかという点につき、今後の方針も含めて自らの立ち位置を確認することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行を受け、 (1)業務量増加等によるエフォート縮減のため史料分析にまで進めなかったことに加え、 (2)出張の自粛により資料収集の機会が限られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)上記の御家人制論に加え、日本中世史における身分論と荘園制論との接点にあたる諸研究について、2020年度から引き続き検討を進める。〈「頼み」の関係〉という観点と〈人的編成〉という観点の双方を重視したい。 (2)古代以来の太政官裁判や、近世における「職分」のあり方などにも目配りしつつ、中世訴訟の実例を見直す作業を中心に進める。その際、中世社会における2つの主要な社会編成原理(主従関係および「職」を媒介とする社会関係)を別個の原理として整理する近時の研究を、一つの補助線とする。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)