微視的プローブを包括的に用いた価数量子臨界現象に関する研究
Project/Area Number |
19K23417
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0202:Condensed matter physics, plasma science, nuclear engineering, earth resources engineering, energy engineering, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷口 貴紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70849950)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 強相関電子系 / 量子臨界現象 / ミュオンスピン緩和 / 中性子散乱 / 放射光 / Yb化合物 / 核磁気共鳴 / 重い電子系 / ミュウオンスピン緩和 / NMR / イッテルビウム |
Outline of Research at the Start |
これまでスピン自由度が主流であった量子相転移の研究において、“価数”が新しい自由度として注目を集めている。本研究では、申請者が行ったNQR/NMR実験から、価数に由来する量子臨界性の兆候を見出したYbCu4Niを対象に、(1) muSRとNMRによるスピン緩和率の測定から量子臨界現象を確定し、(2) この臨界性が価数に起因することをX線吸収発光分光測定で直接決定する。さらに、(3)中性子散乱を行い、Ybイオンに関する微視的な磁気情報を取得する。これらにより価数に由来した量子臨界現象の存在を決定し、その性質を微視的に明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、4f電子を有するYb141系に注目し、価数に由来する量子臨界現象の探索を行った。その探索の過程で、YbCu4AuとYbCu4Niの単結晶合成に初めて成功した。以下ではそれぞれの物質の成果について述べる。 YbCu4Auは多結晶試料において磁場誘起の量子臨界性を示す報告例のある物質である。この量子臨界性の起源は、スピンと価数の両方が関係しているという指摘がある。本研究ではその詳細を調べるために単結晶合成に挑戦し、大型の単結晶を得ることができた。そして、希釈冷凍機を用いた基礎物性測定とmuSR測定を行った。比熱測定から、新たに2段転移を観測し、量子臨界性が強くなる条件で2つの転移温度が一致する振る舞いを見出した。電気抵抗測定からもそれぞれの転移温度において異常が観測された。この2段転移が試料の質でないことを確認するために、異なる手法を用いて単結晶試料を新たに合成し、試料依存性を調べた。その結果、2段転移が再現されたので、本質であると決定した。さらに、muSR測定を行い、2つの相転移の体積分率に変化がないことからも2段転移が本質であることを支持する。 YbCu4Niはゼロ磁場常圧で有効質量が非常に大きな物質である。しかし、その起源はまだ明らかになっていない。そこで、純良な試料合成に挑戦し、希釈冷凍機を用いた電気抵抗測定とmuSR測定を行った。その結果、低温まで磁気揺らぎが発達し、その後にはフェルミ液体になることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度はYbCu4AuとYbCu4Niに対して希釈冷凍機を用いた基礎物性測定とミュオン測定を行った。その結果、当初では予想していなかった成果を両者共に得ることができた。詳細を以下に記す。 YbCu4Auに対して、比熱測定及び電気抵抗測定を希釈冷凍機を用いて行った結果、ゼロ磁場で2段転移を見出した。試料依存性も懸念されるので複数の試料で調べたところ、2段転移が再現されたので、YbCu4Auの本質であると決定した。また、muSR測定から、2つの相の体積分率は一緒であるので、共存しているとは考えられない。これは、2段転移が本質であることを支持する。この2つの相は1.3 T近傍で一致する様子が見られた。今後はNMR測定なども行い、臨界点近傍の電子状態を決定する予定である。 YbCu4Niは電気抵抗測定とmuSR測定を希釈冷凍機を用いて行った。その結果、相転移に由来する異常は観測されなかった。一方で、ミュオンスピン緩和率はおよそ0.1 K以上で降温に伴って増大し、その後に一定となる振る舞いを観測した。これは、磁気揺らぎが低温ほど発達し、0.1 K以下でフェルミ液体状態に変化したことを示唆する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題において、高品質な試料合成に成功したことを決定することができた。そして、極低温測定における基礎物性およびmuSR測定を行うことができた。今後に実施する実験予定を以下に記す。 YbCu4AuとYbCu4Niの両者ともに既に中性子散乱実験を行う準備ができている。両者の結晶構造のパラメータを決定し、研究を進める上での基盤を確固たるものにする予定である。また、放射光実験も行う予定であり、こちらは価数の変化を直接的にとらえることを目的としている。さらに、量子臨界性の強い領域においてはNMRも行う予定であり、動的磁化率の情報を得ることを目的としている。これらの結果についてはそれぞれ論文として結果をまとめる所存である。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)
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[Presentation] Field-Induced Switching of Ferro-Quadrupole Order Parameter in PrTi2Al202020
Author(s)
Takanori Taniguchi, Kazumasa Hattori, Makoto Yoshida, Hikaru Takeda, Shota Nakamura, Toshirou Sakakibara, Masaki Tsujimoto, Akito Sakai, Yousuke Matsumoto, Satoru Nakatsuji, and Masashi Takigawa
Organizer
The 60th REIMEI International Workshop "New excitations for spintronics seen with quantum beams"
Related Report
Int'l Joint Research / Invited
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