潰瘍性大腸炎を発症/悪化させる特定細菌の病原因子の探索と治療・予防法の確立
Project/Area Number |
19K23853
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0803:Pathology, infection/immunology, and related fields
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
久綱 僚 愛知学院大学, 薬学部, 助教 (00845810)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / SDS-PAGE / 菌体成分 / 細胞内侵入性 / 炎症活性 / UCモデルマウス / 腸内細菌叢 |
Outline of Research at the Start |
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UC)は炎症性腸疾患に分類され、時に下血を伴う下痢および腹痛を主症状とし、寛解と再燃を繰り返して慢性的経過を辿る。未だ発症メカニズムは解明されておらず、根本的な治療方法も確立されていない。我々は、UCモデルマウスの腸管内において有意に増加する特定の細菌種の存在を見出し、さらに、当該菌をUCモデルマウスに投与することにより病態が重症化することを実験的に証明した。単独菌であることの利点として、マウス病態悪化のトリガーとなる菌体分子の特定が容易になり、当該菌をより詳細に分析することで、マウス病態悪化因子を見出すことが出来ると考えている。
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Outline of Annual Research Achievements |
我々は以前、潰瘍性大腸炎モデルマウスへのParaclostridium bifermentans subsp. muricolitidis PAGU 1678T菌液処理によるマウス病態の重症化を証明した。病態増悪因子の探索を目的としている本研究では、より単純な実験系として培養細胞を用いた。 昨年度までに、PAGU 1678T株は他の腸内共生細菌に影響を与えることで重症化に寄与しているのではなく、大腸炎に直接影響していることを明らかにした。また、培養細胞にてみられた炎症活性は、PAGU 1678T株の生菌だけでなく死菌においても確認されたことから、大腸炎の重症化はPAGU 1678T株の菌体成分に由来するものであると示唆された。 そこで、モデルマウス病態軽減能を有するClostridium butyricum PAGU 1417T株と併せて 全菌体タンパク質のSDS-PAGEを実施した。PAGU 1678T株に特徴的な泳動バンドの切り出しを行い、タンパク質の抽出とトリプシン消化によってLC/MSを用いた当該成分の同定を試みた。さらに、2株の全ゲノムシークエンスの比較によって、PAGU 1678T株に特徴的な遺伝子の探索を行った。いずれの結果からもPAGU 1678T株に特徴的な成分、遺伝子がいくつか見出された。この中にモデルマウス病態増悪の鍵となる因子が含まれている可能性が高いことから、培養細胞を用いた各成分の炎症活性、遺伝子発現について検討を行っている。残りの期間にてPAGU 1678 T株のモデルマウス病態増悪に寄与する成分、遺伝子を明らかにし、再度モデルマウスを用いた実験系での検証を行いたいと考えている。その後は、当該成分または遺伝子を保有する腸内共生細菌群の把握、さらには当該因子の機能制御を行うことでUC治療および予防法の確立へと発展させていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、Paraclostridium bifermentans subsp. muricolitidis PAGU 1678Tによる潰瘍性大腸炎モデルマウス病態増悪因子の探索を目的としている。昨年度までにDSS(デキストラン硫酸ナトリウム)処理による培養細胞の炎症状態下において、PAGU 1678T株の細胞内侵入能は増大し、さらに当該菌株単独での細胞内炎症活性を示すことを明らかにした。その後、全菌体タンパク質を用いたSDS-PAGEにおいて、病態軽減能を有する細菌種には存在しないPAGU 1678T株に特徴的な菌体成分を同定したが、その際のLC/MSの条件設定に想定以上の時間を要してしまった。また、昨年度からの新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、研究活動に遅れが生じてしまった。当初の研究計画では2年(昨年度)のうちに炎症関連因子の特定まで終えている予定であったため、現在の進捗状況としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
候補となる因子は既に明らかに出来ているため、まずは培養細胞を用いて炎症に関連する成分、遺伝子を絞り込む。炎症活性を有する成分を特定できた際には、再度モデルマウスを用いて当該成分を処理し、マウス病態への影響を評価する。炎症に関連する遺伝子を特定できた際には、PAGU 1678Tから目的遺伝子の欠損株を構築し、モデルマウスへの当該菌液処理による病態への影響を評価する。さらに、目的の菌体成分または遺伝子を保有する腸内細菌群を精査し、それらに特異的な抗菌薬の探索、また、当該因子の機能を制御することで大腸炎治療や予防法の確立に繋げていきたいと考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)