Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
医薬分子を効率的・合理的に創出するためには、三次元的多様性を有する一連の配座制御型化合物群を設計・合成し、三次元的構造活性相関を検討することが有効と推論した。この方法は、標的分子にサブタイプが存在し、その中のあるサブタイプに選択的に作用するリガンドを見出す場合に特に有効と考えられる。これを実験的に検証する目的で、アルギニンを基質としてセカンドメッセンジャーである一酸化窒素(NO)を合成する酵素NOS(nitric oxide synthase)を標的とする創薬研究を企画した。そこで、配座制御素子として独自に開発したシクロプロパンユニットを用いて、三次元的多様性を特徴とする一連のNOSの基質であるアルギニンの配座制限誘導体を設計した。NOSには3つのサブタイプの存在が知られているが、この中で中枢に局在するnNOS阻害剤はアルツハイマー病等の神経疾患治療薬、一方、誘導型のiNosがリュウマチ等の炎症性疾患の治療薬になることが期待されており、これらの選択的阻害薬が見出されることを期待した。既に合成法を確立している光学活性cis-及びtrans-シクロプロパンユニットをシントンとして、目的物の合成を進めることにた。合成上の鍵はシクロプロパン側鎖上にα-アミノ酸構造を立体選択的に構築できるか否かであったが、光学活性なtert-ブタンスルフィナミドを不斉補助としてもちいるGrignard反応によりその構築に成功した。その後、側鎖の増炭、グナニジニル基の導入等を経て目的とする8種類のアルギニン配座制限誘導体を合成することに成功した。現在、これらの生物活性を検討中である。