本科研による研究ではコーパスによる検証により、現代英語において、動詞、形容詞、名詞の補部に叙想法現在が生起する際のパターンが発見できた。統語的には、補文標識thatが省略されにくく、補部では受動文が表れやすい点などが確認できた。このことは今後、詳細に検証する必要があるが、フォーマリティーと関係があると考えられる。今後の課題として、補部の命題に対して話者の心的態度が動詞の3つの形態の選択にどのように影響を及ぼしているのかという点が残った。 ESL(English as a Second Language)の国(香港)では、叙想法現在は学習文法書などの「規範」が大きく影響を与えている点が確認できた。香港英語の使用実態の観察を通して、外国人学習者向けの学習英文法書の記述が学習者に「規範」としての意識を強く植え付けている一方、mandative adjective の補部に生起する叙想法現在は母語話者の使用実態と同様に、規範とは逸脱した使い方が広く見られた。 日本の大学入試問題で叙想法現在が扱われるときのパターンも発見できた。叙想法現在の問題の中には客観問題としてイギリス語法を無視した選択肢が存在することで、学習者に「アメリカ英語が唯一の正しい英語」という偏ったメッセージを送ることにつながる危険性を指摘した。 最終的には、学習英文法で扱われにくい叙想法現在を学習する際の体系的なモデルを提示することができた。
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