Research Abstract |
2005年より,環境科学技術研究所にて閉鎖型生態系実験施設を用いた閉鎖環境居住実験が行われ,3名から4名の居住者(エコノート)による7日間,14日間,28日間の閉鎖環境居住実験が行われた.この実験によるストレスの状態を検討するともに,そのストレスが血小板粘着能等に与える影響を検討した.7日間の閉鎖環境居住実験において,心理調査やストレスマーカーの検討から閉鎖実験中はリラックスしているが,閉鎖実験が終了に近づくにつれ,緊張し,精神的ストレスが高まる傾向が認められた.血中VWF活性と血小板粘着能は,閉鎖開始時に比べ閉鎖終了時に有意に亢進した.また,血管内皮細胞からのVWF放出を促進するバソプレッシンの血中濃度も,閉鎖終了時有意に増加した.これらのことから,閉鎖環境居住によるストレスが,脳下垂体からのバソプレッシン分泌を促進することにより,血管内皮細胞からのVWF放出が促進され,血小板粘着能が亢進する可能性が示唆された.また,遺伝的に規定され血中変動がないと言われている動脈硬化危険因子Lp(a)が,閉鎖終了時有意に増加した.Lp(a)の上昇については,炎症によるIL-6,CRPの上昇後,7日から10日後に上昇するという報告があるが,今回の閉鎖環境居住実験においては,炎症性マーカーの変化は認めなかった.閉鎖環境居住中に生じる何らかの因子が,Lp(a)を上昇させると考えられた.血小板粘着能の亢進,Lp(a)の上昇と合わせて,閉鎖環境居住ストレスは血栓症発症のリスクを高める可能性が示唆された.
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