Project/Area Number |
20H00048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 好信 九州大学, 比較社会文化研究院, 特任研究者 (60203808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬口 典子 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10642093)
辻 康夫 北海道大学, 法学研究科, 教授 (20197685)
松島 泰勝 龍谷大学, 経済学部, 教授 (20349335)
池田 光穂 大阪大学, COデザインセンター, 名誉教授 (40211718)
冨山 一郎 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (50192662)
加藤 博文 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 教授 (60333580)
北原 次郎太 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 教授 (70583904)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥43,030,000 (Direct Cost: ¥33,100,000、Indirect Cost: ¥9,930,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2023: ¥13,130,000 (Direct Cost: ¥10,100,000、Indirect Cost: ¥3,030,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,540,000 (Direct Cost: ¥5,800,000、Indirect Cost: ¥1,740,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,930,000 (Direct Cost: ¥6,100,000、Indirect Cost: ¥1,830,000)
Fiscal Year 2020: ¥8,840,000 (Direct Cost: ¥6,800,000、Indirect Cost: ¥2,040,000)
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Keywords | 先住民族研究 / 返還 / 修復的正義 / 批判的社会運動 / 責任 / 遺骨返還 / 先住民族 / アイヌ民族 / 琉球民族 / 関係性 / 脱植民地化 / 責任の社会連関モデル / 先住民研究 / 説明責任(アカウンタビリティ)) / 先住民(族)研究 / 遺骨返還運動 / 人類学(自然・社会文化) / 国際連携 / 公共哲学 / 返還(restitution) / 批判理論 / 歴史観 / 社会運動 / 対話 / 人類学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、①(自然人類学と文化人類学との両方を包含する広義の)人類学とこれまで分断されてきた批判的社会運動との間に、公共哲学を媒介として新しい連携を構想、②日本において萌芽的状態にある先住民族研究(Indigenous Studies、Native Studies)という研究領域と海外の先住民族研究との間でのネットワーク形成を促進、③この研究領域を日本の公共空間においても意味のある探究として根付かせるために必要な政治・哲学理論と倫理の構築を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先住民族が過去においておもに研究目的で収集された先祖の遺骨を取り戻す活動(以下、返還運動)が、先住民族同士のグローバルな連携を構築し、さらには(これまで敵対してきた)研究者との協力を通じて、傷ついた社会関係の修復作用を有することを示す目標がある。2020年度、ならびに2021年度は、日本国内におけるアイヌ民族と琉球民族の遺骨返還運動の実態を調査した。また、コロナ禍が収束へと向かいつつあった2022年度末には、琉球民族遺骨返還運動とハワイ先住民族遺骨返還運動との連携もおこなった。このような一連の具体的調査とは別に、返還運動を対立と敵対ではなく、破壊された関係の再構築という修復的正義の理論的視点から、遺骨返還を誰もが参加可能なプロジェクトとして位置づけなおすよう、政治哲学理論、社会理論などを中心に、2023年度も継続して議論をおこなってきた。 2023年度は、これまでの国内の遺骨返還に関する研究成果(アイヌ民族、琉球民族)を踏まえ、国際情報発信の年と位置づけ、7月にアメリカ人類学会の会員、ならびにハワイ先住民遺骨返還運動に長らく関わってきた活動家を招聘し、那覇市において国際シンポジウムを開催した。その成果を、2023年3月末、北海道大学アイヌ先住民研究センターの学術雑誌『アイヌ・先住民研究』に翻訳し、掲載した。招聘者6名のうち4名は、アメリカ人類学会・遺骨の倫理的扱いに関する委員会のメンバーであり、札幌市では(樺太アイヌを含む)アイヌ民族、東京都では自然人類学関係者、那覇市では琉球民族から、それぞれ聞き取りをおこない、その中間報告が2024年2月に公開された。また、国際シンポジウムの成果を議論、次年(2024)度の目標である、アメリカ人類学会において分科会を組織、成果報告をおこなうために、合計4回の対面研究会、ならびにシンポジウムを開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開始とともにコロナ禍が始まり、当初は海外渡航が実質的に困難となった。そのため、国内における遺骨返還運動の詳細な調査を実施してきた。しかし、2023年、渡航緩和も進み、2020年から2022年度の成果を踏まえ、予定どおり、国際シンポジウムを開催できた。 当初、シンポジウムの開催地は札幌市と那覇市であったが、諸般の事情により、那覇市でのみ開催した。また、国際シンポジウムにともない来日した研究者4名によるアイヌ民族と琉球民族からの聞き取り調査も実施した。2023年度まで、研究の進捗は良好であると判断する。 2023年9月には、琉球人遺骨返還訴訟の大阪高裁判決が結審、原告が敗訴した。遺骨の所有権をめぐる法廷での闘争には限界があるという司法の判断である。これにより、遺骨返還は権利を争うのではなく、文化的・宗教的実践に基づき、子孫の責任として先祖の遺骨を取り戻すというハワイ先住民たちが国際返還を可能にしたモデルに移行するだろう。本研究においても、責任と修復正義という概念のもと、遺骨返還が文化・言語復興運動と同じく、破壊された関係を再構築するプロジェクトであるという理論化を優先してきた。今後は、その成果を実践に反映させるよう努力することになろう。 最後に、返還とは遺骨を取り戻すという実践だけではなく、考古学や文化人類学理論に大きな影響を与える。たとえば、遺骨収集は植民地主義によって可能になったが、返還は脱植民地化の変奏ともいえる。本研究においても、返還の理論的可能性について、議論を重ねてきた。成果の一部は、代表者と(ながらく遺骨返還に関与してきた)米国の研究者であるチップ・コルウェル氏との(英語による)対話として実を結び、近日中に、Journal of Royal Anthropological Instituteに掲載予定(2024年12月刊行予定)である。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、本研究の最終年度にあたる。2019年11月に提出した新規申請書に記載したとおり、2024年度は研究成果を国際学会において情報発信するという位置づけである。 具体的には、11月中旬にアメリカ合衆国フロリダ州タンパで開催予定のアメリカ人類学会において分科会を組織し、論文の口頭発表者を本研究のメンバー4名、ディスカッサントにはアメリカ人類学会員2名を依頼した。このような分科会構成により、国際的な舞台での情報発信、意見交換の場を確保した。ディスカッサント2名は、2023年に訪日した遺骨の倫理的扱いに関する委員会メンバーであり、日本の状況だけではなく、世界の遺骨返還に関する情報を熟知しているため、有意義な意見交換を期待できる。昨年から、この分科会のために、ディスカッサントと代表者との間で、定期的にZOOMを介した意見交換をおこなってきた。 また、研究メンバー全員が国内の学会等での発表をおこない、成果の社会還元を進める。代表者は、6月の日本文化人類学会研究大会での分科会を組織し、発表をおこなう。別に、分担者の一人は日本政治学会において個人発表として成果還元を予定している。 出版物として、代表者と分担者全員が執筆者となり、二つのプロジェクトを計画中である。一つは、編著となる商業出版物である。これは、これまでの科研の(実践報告と理論的提言を含めた)学術的成果を問う目的がある。また、もう一つは、アイヌ民族が先祖の遺骨返還を求めるときに資料として活用できるよう、海外の事情や研究倫理などに関する情報共有を目的とした小冊子を作製することである。後者は、遺骨返還が社会において実践されなければ、過去の過ちを是正するという動きには結実しないという反省の上にたち企画されたが、学術界と先住民族との疎遠な関係をより親密な関係へと改変しようという試みでもある。
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