Project/Area Number |
20H00205
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
土山 明 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (90180017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 亮 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10324609)
松本 恵 東北大学, 理学研究科, 助教 (50725455)
奥住 聡 東京工業大学, 理学院, 教授 (60704533)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥44,330,000 (Direct Cost: ¥34,100,000、Indirect Cost: ¥10,230,000)
Fiscal Year 2024: ¥8,710,000 (Direct Cost: ¥6,700,000、Indirect Cost: ¥2,010,000)
Fiscal Year 2023: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2022: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2021: ¥9,100,000 (Direct Cost: ¥7,000,000、Indirect Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2020: ¥8,320,000 (Direct Cost: ¥6,400,000、Indirect Cost: ¥1,920,000)
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Keywords | リュウグウサンプル / 炭素質コンドライト / 氷 / 炭素質コンドライ / はやぶさ2 / グランドタック / 太陽系固体物質の2分性 / 彗星塵 / ナノX線CT |
Outline of Research at the Start |
近年のグランドタックモデル(木星・土星の大移動と小惑星の散乱)および太陽系固体物質の同位体2分性を考慮して、太陽系始原物質の分析(氷の痕跡や流体の探索)や再現実験、理論的考察により、以下の太陽系始原物質形成・進化の統一モデルを構築する。(1)始原的隕石や彗星塵を構成する高温物質は、共通した局所的な加熱イベントにより生成され、氷や有機物とともに母天体として集積した。(2)上記イベントは、それぞれの隕石グループに対応して太陽系の外側の様々な場所で起こり、隕石母天体は木星・土星の大移動に伴う散乱により内側の小惑星帯へと移動した。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「太陽系始原物質は共通した局所加熱イベントにより生成、氷や有機物とともに母天体として集積、隕石母天体は散乱により内側の小惑星帯へと移動した」という作業仮説を設定し、高温物質の再現実験、再現物の水質変成実験、太陽系始原物質の分析、理論的考察により、太陽系始原物質形成・進化の統一モデルを構築することである。当該年度で到達された主な成果は以下の通りである。 コンドリュール、マトリクスの同時生成プロセスの解明:非晶質ケイ酸塩微粒子の硫黄を含む高温ガスからの凝縮実験により、彗星塵だけでなく炭素質コンドライトのマトリクスの凝縮による生成の可能性を示した(Enju et al. 2022)。 炭素質コンドライト母天体の生成領域の特定:小惑星リュウグウから持ち帰られたはやぶさ2サンプル中にCO2に富む流体を発見、この物質が木星軌道の外側の領域で生成されたことを明らかにした(Nakamura et al. 2023)。始原的炭素質コンドライトに含まれる物質(宇宙シンプレクタイト)が、硫黄を含む彗星の氷に関連することを示した(Matsumoto et al. 2021)。 はやぶさ2サンプル分析への応用:はやぶさ2サンプルの鉱物・岩石学的、化学的特徴を明らかにし、このサンプルが地上変質を受けていないCI隕石に対応することを示した(Ito et al. 2022; Nakamura et al. 2023、他)。X線CTによる3次元分析により、サンプル密度を正確に求め(Nakamura et al., 2023)、微惑星として集積後に受けた水質変成作用のモデル化をおこなった(学会発表: Tsuchiyama et al. 2022)。 太陽系始原物質形成・進化の統一モデルの検討:太陽系始原物質形成・進化についてのモデルを作業仮説、論文発表した(土`山・松野, 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、はやぶさ2サンプルの分析を中心に、多くの論文を発表することができた。とくに、はやぶさ2サンプルのCI隕石やその他のグループの炭素質コンドライトとの相違点から、はやぶさ2サンプルやCI隕石の特徴を明らかにするすることができた。さらに、CI隕石もCM隕石と同様に木星軌道以遠の領域で生成されたことが明らかにされ、本研究の目的である太陽系始原物質形成・進化の統一モデルに一歩近づいた。 一方、新型コロナパンデミックのため、いくつかの実験(とくに高温物質の再現実験、再現物の水質変成実験)は予定よりも遅れたが、再現実験生成物を用いた水質変成実験を開始しており、はやぶさ2サンプルの3次元分析により提唱した水質変成作用モデルと水質変成実験との比較をおこないつつある。 太陽系始原物質(彗星塵、隕石、リターンサンプル)についてのナノX線CTを用いた新しい分析手法も順調に進み、CT撮影後の3次元データを基にして、集束イオンビーム(FIB)により興味ある領域をナノサンプリングし、透過型電子顕微鏡(TEM)による詳細分析をおこない、はやぶさ2サンプルのマルチスケールでの微細3次元構造が明らかにされつつある。これにより、微惑星の集積やその後の水質変成作用のモデルを提唱することができた。 また、太陽系始原物質形成・進化についてのモデルをより具体的に提案することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナパンデミックのためにあまり進められなかった実験(高温物質の再現実験、再現物の水質変成実験)を今後さらに系統的に行ない、提唱した水質変成作用モデルと水質変成実験との比較をおこない、モデルの精密化だけでなく、微惑星として集積した際のはやぶさ2サンプルやCIコンドライトの水質変成前の構成物質の詳細を明らかにしたい。 太陽系始原物質(彗星塵、隕石、リターンサンプル)について行ってきたナノX線CTを用いた系統的な分析を、今後さらに様々なグループの炭素質コンドライト隕石へ適用し、リュウグウ物質と地球上変質前のCI隕石との差異を解明するとともに、太陽系始原物質として最も重要なCI隕石の、炭素質コンドライト隕石の位置付けを明らかにしたい。また、この手法は2023年9月に地球帰還が予定されているNASAの小惑星べヌーのサンプル分析にも適用し、流体包有物の探査など、新たな展開が期待できる。 これらにより、当初予定していた研究実施計画を進めるとともに、理論的な研究も進める。
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