Project/Area Number |
20H01628
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 晃一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80324987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝野 正章 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (10285512)
高橋 哲 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (10511884)
篠原 岳司 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (20581721)
高野 和子 明治大学, 文学部, 専任教授 (30287883)
榎 景子 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60813300)
清田 夏代 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (70444940)
藤村 祐子 滋賀大学, 教育学系, 准教授 (80634609)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥14,430,000 (Direct Cost: ¥11,100,000、Indirect Cost: ¥3,330,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2020: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
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Keywords | 教員人事 / 教育行政 / 地方分権 / 教員組織 / 国際比較 / 地方分県 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、公立小学校を主たる対象に絞りながら、各々異なる分権化の度合い・質を持つ 米国・英国・日本の現状を比較調査し、分権型の教員人事が教員集団へ与える影響に着目した上で、その存立要件の解明を目的とするものである。教員人事の分権化がもたらす地方間・学校間の格差拡大など弊害への対処法や、教員集団の関係性がどのような影響を受け、教員らが尊厳・被承認感・存在意義・役割認識をいかに獲得しているか/いないかといった実存的側面に光を当て、米英の先進例から示唆を得ながら日本の現状との比較を通じて、制約条件・補完ルール等を探究し、教員人事の集権と分権をめぐる見解の対立に一石を投じることを目指している。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、公立小学校を主たる対象に、各々異なる分権化の度合いや質を持つ米国・英国の現状を比較調査し、その存立要件の解明をめざすものである。今年度の研究では、昨年度に手がけた米国・英国における学校分権型教員人事をめぐる概況と作用の整理を基盤として、両国それぞれの展開状況に応じた論考の作成に着手した。まず英国における学校裁量の拡大の政治的な背景と経緯、議論を概括し、同国における学校分権型教員人事の基本的な性質が教師や学校の専門性を制約するような側面をもっていたという背景、また、こうした流れの帰結としての現代的状況を検証し、学校分権型の教員人事が学校現場に大きな負担を強いるものとなっていること、またそれによって学校のあり方自体の見直しが論じられるような事態となっていることを示した。米国については、学校の人事上の裁量拡大を適切に実施する上で重要となる教員の専門性・専門職性をめぐる理論と実践に触れた上で、法的な諸規定の様相と運用実態に焦点を当てて分析と検討を試みた。その結果、第一に、学校分権型教員人事の陥穽を回避・抑止するためには専門職集団を築く専門性論と、それを実現する専門職性論が必要となることを指摘した、具体的な対応概念と制度的装置を明らかにした。第二に、教員人事をめぐる法的規定を検討して、被雇用者たる教員が不利益を被ることのないよう丁寧に整備されており、教員採用において学区や校長に与えられる権限は大きくはあるが、それは「枠づけられた権限」と評せることを明らかにした。第三に、教員の採用・異動をめぐる学校裁量の実態を検討したところ、学校分権型の教員人事が成立しうる余地を確認した上で、学校課題と人事のミスマッチや「たらい回し」などの困難が生じて上記身分保障と相克しながらも、決して保障を緩和することなく、是正努力が重ねられていることを明らかにした
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、昨年度の研究において大幅に制約された海外渡航調査の遅れを取り戻すべく、これまで以上に情報収集を進めて、数多くの政策文書および研究文献を収集・解析することに加え、積極的なメールインタビューなどを試みて、英国・米国における学校分権型の教員人事の実情に迫ることができるよう努めた。その結果として、研究代表者および研究分担者が活動母体の一つとする日本教育行政学会において共同研究発表を実施することができた。そこでは、他の研究者からの積極的な質問や意見を受けて、また、発表後もメールなどによる問い合わせを受けて、一定の反響の大きさを実感することができた。海外渡航調査については今年度も残念ながら、米国・英国ともに実施することができなかった。研究計画を翌年度にも延長して渡航調査計画を再立案したものの、残念ながら渡航が可能にならなかった。とはいえ、積極的なデータ解析と研究協議を積み重ねたことによって、上記のように比較的まとまりのある共同研究報告の作成に至り、昨今、わが国でも深刻な社会問題となりつつある教員不足問題とその解決策を、学校現場の実情から見通すための基盤として、教員人事制度の歴史的経緯や現状の課題などについて整理したものとして注目される研究であることが分かった。また、内容的にも、一定程度、広範な論点を包括的に手がけるものとなったため、これまでの研究の空白を埋めることができるのではないかと期待している。今後、この研究発表を基にして共著論文として学会等への投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって英国および米国の学校分権型教員人事制度の理論的基盤、歴史的経緯、制度概要とそのバリエーション、制度的枠組の中での実践慣行の概要をつかむことができた。そこでは、また、昨年度に引き続いて渡航調査の際の調査項目についても概ね妥当であることが判明してきたため、計画自体を大きく変更する必要はないものと考えている。ただ、新たな論点として、英国においては自律性の高い設置形態の学校群において、学業成績向上に一元化するための教員人事の画一化ではなく、むしろ各地における児童生徒の人種的背景に対応した教員雇用がなされている萌芽が確認できた。これは慢性的な教員不足に悩む中での取り組みとしてわが国にも示唆を与える可能性があるため、次年度以降、特に焦点化して調査する必要性を感じている。米国の場合、校長が学校組織マネジメントに注力する中で、単に各校の近視眼的利益だけが最優先されているのか、それとも学区全体の利益をも視野に入れているのか、あらためて確認する必要性が生じている。同様に、学区と教職員組合との団体交渉協約についても、教員個人の権利保障の実現という積極的側面だけでなく、その反面としての全体調整を困難化させる消極的側面が発現しているのか、あるいは予想に反して、学区教育委員会事務局や校長たちの個別行為との相互作用の中で、むしろ逆説的に全体調整的な作用を及ぼしているのか、検証する必要性が生じている。これらは新たに明確化した論点であり、こうした諸点の確認も次年度以降の調査の中では活用していきたい。これらも踏まえて、次年度以降に予定しているわが国での実情についても調査を重ねていく予定である。
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