燃料デブリからの核種溶出に及ぼす有機酸・炭酸影響評価
Project/Area Number |
20H02665
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 31010:Nuclear engineering-related
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 隆之 京都大学, 工学研究科, 教授 (60314291)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐島 陽 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (00400424)
秋山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80746751)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥18,070,000 (Direct Cost: ¥13,900,000、Indirect Cost: ¥4,170,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2020: ¥10,400,000 (Direct Cost: ¥8,000,000、Indirect Cost: ¥2,400,000)
|
Keywords | 燃料デブリ / 溶解挙動 / 炭酸 / 有機物 / 錯生成反応 |
Outline of Research at the Start |
発電用原子炉の過酷事故で生じた燃料デブリの最終処分方策を考えるとき、デブリの長期安定性について検討しなければならないのは、地下水接触によりもたらされる化学影響である。デブリの構成元素(ウランや核分裂生成物、マイナーアクチニド)への有機酸や炭酸との錯生成能に着目し、事故時に発生したと考えられる燃料デブリの模擬を行うとともに、地下環境を再現した溶解実験を行う。得られた知見をもとに、デブリがどのように化学的な劣化を受けるかについて、熱力学的・分光学的に評価する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
実燃料デブリの溶解挙動を調査するための基準化合物として、MCCIデブリとよばれるウランカルシウム酸化物に着目した。大気中1200℃で二酸化ウランと炭酸カルシウムの混合物から合成した単相CaUO4を用いて、水相への溶解挙動を検討した。福島第一原子力発電所(1F)デブリの冷却水と地下水を模擬した3つの液性条件下で静的浸漬試験を実施した。所定の時間浸漬後、上澄み液の限外ろ過により固相懸濁成分およびコロイド成分を除去した後、pH、Eh値、UおよびCa濃度、全炭酸濃度を測定し、XRDとXAFSにより固相状態を評価した。固液の分析結果をもとに、ウランカルシウム酸化物の溶解反応を熱力学的に解釈した。炭酸を含まない還元的条件では、ウランはCaUO4固相中で6価から5価に還元され、非化学量論的なCaUO4-xに変化した。溶解したウランは水相で4価まで還元されることで非晶質のウラン水酸化物固相を形成し、ウランの見かけの溶解度が制限されることを見出した。また、炭酸を含まない酸化的条件では、酸性から中性pH域でMetaschoepite、塩基性域では重ウラン酸ナトリウムを2次鉱物として形成することが示唆された。さらに、高濃度の炭酸を含む酸化的条件下では、浸漬後のXRD測定等で初期CaUO4以外の固相は認められなかったが、得られたカルシウム濃度から、溶解度が炭酸カルシウム2次鉱物によって制限されると解釈された。即ちCaUO4からのカルシウム溶解が抑制され、その結果ウランの溶解も抑制される可能性を示唆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本格的な燃料デブリの分析が開始される段階にある福島第一原発において、その後の取出し作業など廃炉完遂に向けて前進するには、最終処分に対するまだ見えない処分安全評価基準をクリアする必要がある。諸外国や我が国での使用済燃料直接処分の検討にも照らして、過度に保守的な前処理を施すことなく、安全かつできる限り合理的なデブリ処分方法を模索するためには、まず未処理の燃料デブリが炭酸や有機酸を含む水に対しどのように溶解し、デブリが変質するかを理解することが重要である。本年度は事故進展において格納容器底部で生成したと想定される燃料デブリの一つとして、特にウランカルシウム酸化物(模擬燃料デブリ)に着目した。精製調製後のCaUO4模擬デブリについて、粉末X線回折やXAFS等により浸漬前後の相関係を評価した。昨年度検討した鉄ウラン酸化物はそれぞれ3価および5価であったが、ウランカルシウム酸化物は2価および6価である。還元雰囲気での水浸漬により、固相ウランの一部は5価に還元されることが分かり、さらに溶解後には4価ウラン水酸化物に還元されるなど、水環境に依存してデブリ成分が異なる酸化還元および溶解過程をとることを例示した。また、炭酸共存によるウランの濃度上昇が顕著であることを実験的に示し、その影響を熱力学的に解釈した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、デブリの化学的劣化に及ぼす有機酸・炭酸の寄与明らかにするため、使用済燃料が格納容器内材料と高温反応した際に生じる種々のデブリを想定した模擬デブリを調製し、炭酸および有機酸存在下でのデブリからの核種溶出実験、および分光法による固相表面や溶存種の状態分析を行ない、デブリ溶解反応の総合的理解を目指している。これまでの検討で、模擬燃料デブリである種々のウラン化合物模擬デブリからのUの見かけの溶解度が炭酸および有機酸濃度によって変化し、その挙動が熱力学的に解釈可能であることの見通しを得ている。今後は、固相のXRD測定評価やXAFS測定をさらに進めることで、デブリ溶解挙動のより詳細な理解を進め、実燃料デブリの溶解反応モデルの検討に資することが期待される。
|
Report
(3 results)
Research Products
(14 results)