犬膀胱癌の分子異常に着目した新規複合免疫療法の確立
Project/Area Number |
20H03144
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42020:Veterinary medical science-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 貴之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40447363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 大貴 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 農学特定研究員 (60843216)
前田 真吾 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80755546)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥17,680,000 (Direct Cost: ¥13,600,000、Indirect Cost: ¥4,080,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2020: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
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Keywords | 犬 / 腫瘍 / 免疫療法 / 膀胱腫瘍 / 腫瘍免疫 / 固形腫瘍 / IDO / PGE2 / 複合免疫療法 / 膀胱癌 / エピゲネティック薬 |
Outline of Research at the Start |
犬膀胱癌は手術で取りきることが困難であり、効果的な全身療法が重要となるが、抗癌剤の有効性が低く予後の悪い腫瘍である。近年、新たな全身療法として、免疫療法がいくつかの腫瘍種で根治に至るほどの高い治療効果を示している。申請者は、犬膀胱癌が免疫療法に感受性の高い腫瘍種であり、PD-L1が攻撃相の重要な抑制機構であることに加え、大部分の犬膀胱癌に共通するBraf, HDAC分子異常が、抗腫瘍免疫のKey相の抑制を担っていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、Braf, HDAC, PD-L1阻害により、抗腫瘍免疫に重要な連続するKey3相全ての免疫抑制を解除し、犬膀胱癌の根治を目指した新規複合免疫療法を開発に取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、申請者らが同定した犬膀胱癌のBraf遺伝子異常およびエピジェネティック異常に着目し、それらによる抗腫瘍免疫抑制機序の解明とそれらの阻害による複合免疫療法の有効性の検証である。 今年度は、Braf遺伝子異常シグナルに関連する免疫調節分子の検証を行った。その結果、Braf遺伝子異常シグナル経路を阻害することで、プロスタグランジン(PG)E2の産生酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)2の発現が抑制されることを発見した。さらに、細胞外に放出されたPGE2のパラ/オートクラインにより、犬膀胱癌細胞株の細胞膜に存在するPGE2の受容体(EP1-4)のうち、EP2およびEP4受容体を介して、犬膀胱癌細胞質内におけるアミノ酸代謝酵素(Indoleamine 2,3-dioxygenase;IDO)の発現が誘導されていることおよび、PGE2が抗原提示細胞に直接作用することで抗腫瘍免疫応答を増強する作用を持つ分子群(damage-associated molecular patterns;DAMPs)に対する反応性を減弱されていることを発見した。IDOは、細胞外から取り込まれた必須アミノ酸トリプトファンを、キヌレニンに変換する律速酵素である。そこで、LC-MS/MS法により、培養液中のトリプトファン/キヌレニン濃度を測定したところ、犬膀胱癌細胞株の培養上清において、顕著な比率の変化が生じており、IDOの機能的発現が確認された。さらに、IDO阻害剤によりアミノ酸比が是正されることを突き止めた。近年、腫瘍組織におけるIDO過剰発現によるアミノ酸比異常が新たな抗腫瘍免疫抑制機構として注目されており、類似の機構が犬膀胱癌においても存在する可能性がわかった。現在、犬膀胱癌のBraf遺伝子異常に起因するIDO発現を介した抗腫瘍免疫抑制作用について、犬免疫細胞を用いて解析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、本研究で注目する犬膀胱癌の分子異常であるBraf遺伝子変異に起因する抗腫瘍免疫抑制機構として、PGE2自身による抗原提示細胞抑制作用およびIDOの発現によるアミノ酸代謝異常を介した抗腫瘍T細胞抑制作用の一端が解明された。これらはいずれも、犬膀胱癌で発見された全く新しい免疫抑制機構であり、本研究仮説を支持する重要な発見であった。また、それらを阻害した際の抗腫瘍免疫応答増強作用に関しても、概ね予想通りの結果が得られていること、エピジェネティック異常に関しても、並行して解析を進められていることなどから、本研究は当初の計画通り、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の解析により発見された、PGE2自身による抗原提示細胞の抑制作用およびPGE2を介したIDOによる抗腫瘍T細胞の抑制作用について、in vitro,in vivoでの検証を進めるとともに、エエピジェネティック異常に起因する抗腫瘍免疫抑制作用について、解析を進める。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)