ハムスターをモデルとした卵形成時におけるレトロトランスポゾン制御機構の解明
Project/Area Number |
20H03175
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 42040:Laboratory animal science-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
蓮輪 英毅 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50343249)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥17,810,000 (Direct Cost: ¥13,700,000、Indirect Cost: ¥4,110,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2020: ¥6,890,000 (Direct Cost: ¥5,300,000、Indirect Cost: ¥1,590,000)
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Keywords | ゴールデンハムスター / 機能性RNA / 生殖細胞 / ゲノム編集 / エピジェネティクス / トランスポゾン / 遺伝子発現制御 / 小分子RNA / PIWI / piRNA |
Outline of Research at the Start |
真核生物のゲノムDNAのほとんどは遺伝子ではなく、そのおよそ半分はレトロトランスポゾンに由来する配列である。これらは不要な配列であると考えられてきたが、様々な遺伝子のスイッチとして機能したり、正しい染色体構造を維持するために必要な配列であることがわかってきた。一方で、それら自身が活性化し過ぎるとゲノムに問題を起こすことも明らかにされている。本研究はレトロトランスポゾンを抑制するPIWI-piRNAに着目し、哺乳動物個体におけるトランスポゾン抑制機能の解明に挑戦するものである。この研究により、トランスポゾンの活性化に起因する病気が明らかになり、新しい治療法への応用も期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類のPIWI遺伝子はpiRNAとともに雄の生殖細胞でトランスポゾンの抑制分子として機能することが知られている。これらの知見はマウスを用いた研究から明らかにされたものである。ところが、ヒトをはじめとするほとんどの哺乳動物は雌の生殖細胞にもPIWI遺伝子を強く発現しており、マウスよりも1つ多くPIWI遺伝 子を有する。申請者はこれまでに雌の生殖細胞で強く発現するPIWIL1とPIWIL3を見出し、それらの分子特性をあきらかにしている (Nucleic Acid Research, vol. 49, 2021)。本年度はゲノム編集によりPIWIL1とPIWIL3を欠損させたゴールデンハムスターを用い、個体レベルにおけるPIWI遺伝子の解析を進めた。その結果、PIWIL1を欠損した雌のゴールデンハムスターは不妊となることを明らかにした。また、その原因は母性に発現するPIWIL1が無いと2細胞期までしか発生しないことであることがわかった。一方で、マウスでは存在しないPIWIL3を欠損したゴールデンハムスターの雌も不妊傾向が強いことを明らかにした。PIWIL3を欠損した卵子由来の胚は、発生が遅くなったり、発生の途中で一部の割球のみの卵割が止まったりすることを見出した。これらの結果から、卵子で強く発現するPIWIL1は胚発生に必須であること、PIWIL3は必須でないが胚発生時に機能しており、マウスでは明らかにできなかった雌におけるPIWI遺伝子の重要性を明らかにした。さらにこれらのことは、ゴールデンハムスターが新しいヒト疾病モデルとなることを示し、Nature Cell Biology, vol. 23, 2021に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PIWIL1およびPIWIL3を欠損したゴールデンハムスターを作製し、その表現型を解析しマウスでは知り得なかった雌におけるPIWI遺伝子の機能を明らかにすることに成功した。母親から受け継がれたPIWIL1は初期胚の遺伝子発現、PIWIL3はDNAメチル化といった異なるターゲットを正しくチューニングするために必要であることを明らかにした。この成果はNature Cell Biology, vol. 23, 2021に報告し、世界の研究コミュニティーに大きな影響を与えることができた。加えて、これらを解析する過程で、これまで胚培養が難しいとされてきたゴールデンハムスター初期胚の培養について多くを経験することができたため、ゴールデンハムスターの発生工学を進展させる可能性を得た。また、予定していたPIWIL2とPIWIL4のゲノム編集ハムスター作製については、PIWIL1およびPIWIL3ゲノム編集ゴールデンハムスターの解析に時間と飼育スペースを割いたために、少数での施行となり変異体は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究でPIWIL1とPIWIL3を欠損したゴールデンハムスターの卵子由来の胚発生に異常が出ることを明らかにしているが、その障害の本質的な原因には迫れていない。PIWIL1を欠損した胚については、2細胞期における核小体の形態異常などの表現型も見いだしており、それらの異常を起点として2細胞期での発生停止について詳細を解析する。PIWIL3を欠損した胚については、ゲノムDNAのメチル化の変化のみで、それ以外の大きな変化はないが、ヒストンメチル転移酵素であるG9aノックアウトマウスと類似した表現型であることを突き止めている。その他にも同様な表現型を示す複数のノックアウトマウスを見出しており、それらの分子メカニズムや機能との共通点を中心に解析することで、PIWI遺伝子群とpiRNAが制御する生命現象と分子メカニズムの解明に挑む。PIWIL2, PIWIL4については作製でき次第、解析を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)