内在性植食性昆虫における寄主転換・多様化過程とその駆動要因
Project/Area Number |
20H03321
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 真 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80204494)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2021)
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Budget Amount *help |
¥14,950,000 (Direct Cost: ¥11,500,000、Indirect Cost: ¥3,450,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2020: ¥7,410,000 (Direct Cost: ¥5,700,000、Indirect Cost: ¥1,710,000)
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Keywords | 潜葉虫 / ハモグリバエ科 / 多様性 / 寄主特異性 / 苔類 / データベース / 被子植物 / 植食性昆虫 / 多様化 / 絶対送粉共生 |
Outline of Research at the Start |
食植性昆虫は著しく高い多様性を持っているが、植物と植食性昆虫の相乗多様化過程は進化学の重要なテーマの一つである。内在性食植性昆虫はとりわけ寄主特異性の高いグループであり、その代表が潜葉虫である。一方、内在性昆虫が直接送粉者としてかかわる共生関係として、コミカンソウ科の絶対送粉共生系がある。本研究は、潜葉虫寄生系と絶対送粉共生系双方に焦点を当て、コケ以上の日本産植物すべてを対象にした寄主植物利用様式の膨大なデータベースを完成させる一方で、植物と昆虫の系統関係を照合させつつ、内在性食植性昆虫の起源・寄主転換・多様化の過程とその駆動要因を考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
日本産すべての種の植物を対象にした、潜葉虫の網羅的探索・飼育を進め、日本の潜葉虫相の全貌に近づいてきた。採集・飼育し羽化させた潜葉虫の成虫標本はインロー式標本箱で約900箱に達し(1箱に数百個体を収蔵)、潜葉虫の潜孔葉のさく葉標本は10万点を越えている。これらの標本とデータは世界有数の潜葉虫の寄主利用様式のデータベースになっている。このデータベースの独自性は、(1)その種数と標本数が著しく多いこと、(2)探索が北海道から琉球列島に至るさまざまな気候帯・生物地理区・生態系に及んでいること、(3)コケから被子植物にわたるすべての分類群の植物のすべての種が対象になっていること、(4)分布が限られていたり、稀だったりする植物も、意図的・精力的な探索対象となってきたこと、(5)潜葉虫は鞘翅目、膜翅目、鱗翅目、双翅目の多様な分類群にわたり、それらすべての分類・同定を行っていること、(6)羽化成虫標本と潜孔葉のさく葉標本をセットで収集していること、などである。これらのデータベースをもとに、どの種の潜葉虫がどの植物を利用しているか、そしてそれぞれがどのような潜孔様式を持っているのか、どのような寄生蜂にどのぐらい攻撃されるのか、といった分析を進めつつある。これまでに収集した潜葉虫の成虫標本の整理・分類を進め、潜葉虫のリストを作成した。 今年度は特に、コケ植物(苔類とツノゴケ類)を利用するハモグリバエ科の成虫の交尾器形態の比較を行った。その結果、日本列島にはコケに潜葉する30種を超えるハモグリバエ類が生息し、ほとんどの種が1つの属のコケしか利用せず、きわめて種特異性が高いことが明らかになった。また予備的な分子系統解析によって、これらの種群が単系統であり、被子植物を利用するものに由来しているらしいことが明らかになりつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本産すべての種の植物を対象にした、潜葉虫の網羅的探索・飼育を進め、日本の潜葉虫相の全貌に近づいてきた。採集・飼育し羽化させた潜葉虫の成虫標本と、潜葉虫の潜孔葉のさく葉標本は、世界有数の潜葉虫の寄主利用様式のデータベースになっている。このデータベースは、(1)その種数と標本数が著しく多いこと、(2)探索が北海道から琉球列島に至るさまざまな気候帯・生物地理区・生態系に及んでいること、(3)コケから被子植物にわたるすべての分類群の植物のすべての種が対象になっていること、(4)分布が限られていたり、稀だったりする植物も、意図的・精力的な探索対象となってきたこと、(5)潜葉虫は鞘翅目、膜翅目、鱗翅目、双翅目の多様な分類群にわたり、それらすべての分類・同定を行っていること、(6)羽化成虫標本と潜孔葉のさく葉標本をセットで収集していること、といった際立った独自性を持っている。 現在、重点的に分析を進めている、コケに潜葉するハモグリバエ科昆虫は、これまでに1種も日本から報告されていない。国外でも断片的な記録があるのみで、コケに確かに幼虫が潜葉しているという事実は本研究によって初めて発見されたものである。しかもそのハモグリバエ科の昆虫が著しく多様性が高く、しかもきわめて寄主特異性が高いという発見は、食植性昆虫の多様化を考える上で重要な示唆を含んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本産すべての種の植物を対象にした、潜葉虫の網羅的探索・飼育もさらに進め、採集・飼育し羽化させた潜葉虫の成虫標本と、潜葉虫の潜孔葉のさく葉標本をもとに、潜葉虫のデータベース作成を進める。潜葉虫の予備的リストをさらに精査し、昆虫によって分類したリストと、寄主植物によって分類したリストの双方を作成する。 現在、重点的に取り組んでいる、コケに潜葉するハモグリバエ科昆虫の成虫の外部形態と交尾器形態の分析を進め、30種を超える全種を新種記載しようとしている。これらの種の分子系統解析も進め、コケ利用の種群が、被子植物利用の種群とどのような関係にあるか、苔類利用の種群とツノゴケ利用の種群の関係はどうなっているか、コケ利用種群の多様化がどのような契機で起こったのか、といった大きなテーマにも迫る予定である。 ハモグリバエ科の多様性把握は、コケ植物を利用するものに加え、シダ植物を利用するものと、被子植物を利用するものまで範囲を広げてゆく。次に、ハモグリバエ科、チビガ科、タマムシ科、ハバチ科の潜葉虫の多様性の把握をも進めたい。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)