Project/Area Number |
20H03392
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 47040:Pharmacology-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吾郷 由希夫 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50403027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中澤 敬信 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (00447335)
近藤 昌夫 大阪大学, 大学院薬学研究科, 教授 (50309697)
鈴木 亮 帝京大学, 薬学部, 教授 (90384784)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,810,000 (Direct Cost: ¥13,700,000、Indirect Cost: ¥4,110,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2020: ¥6,630,000 (Direct Cost: ¥5,100,000、Indirect Cost: ¥1,530,000)
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Keywords | 統合失調症 / コピー数変異 / 遺伝子改変マウス / iPS細胞 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Research at the Start |
本研究では、統合失調症の確度の高い遺伝的要因としてのコピー数変異に着目し、7q36.3微細重複によるVPAC2受容体過剰活性化の病態生理学的意義の解明と、難治性統合失調症の克服に向けた新しい治療技術・創薬戦略の基盤構築を目指す。具体的には、①患者由来細胞とマウスモデルを用いた病態神経基盤の解明と創薬モデルとしての妥当性検証、②生理活性物質等の脳内(部位特異的)送達技術の開発を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経ペプチド受容体であるVPAC2の遺伝子重複を有する統合失調症患者由来iPS細胞の活用と、VPAC2受容体の過剰活性化を病態基盤とするオリジナルなモデルマウス(個体・細胞)とを用いる双方向性トランスレーショナルリサーチの展開から、病態理解と創薬のための確度の高いモデルの確立を目指し、さらに、安全で有効な脳への新規ドラッグデリバリーシステムの基盤構築を通じて、臨床応用に資する薬物治療技術を開発することを目的としている。本年度は、in vitroの実験系を構築し、新規に同定したVPAC2受容体アンタゴニストペプチドKS-133の薬理学的プロファイル(細胞内シグナルへの影響)を明らかにし、また人工知能AlphaFold2と分子動力学シミュレーションを用いることで、ペプチド化合物の詳細なVPAC2受容体結合メカニズムの解明に成功した。さらに、この過程で、VPAC2受容体に存在するシステイン残基の新たな機能的役割を見いだした。臨床検体を用いた検討として、患者由来iPS細胞から作製した神経幹細胞の神経細胞への分化能を評価した。VPAC2受容体の遺伝子重複を有する患者由来神経幹細胞では、健常者と比べ、内因性リガンドである下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)ならびに血管作動性腸管ペプチド(VIP)処置後の分化神経細胞の割合が高いことを見いだした。さらに、薬物治療技術に関して、トリセルラータイトジャンクション(三細胞間密着結合)の構成蛋白質に着目した新たな脳内薬物送達法について検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、新規VPAC2受容体アンタゴニストペプチドKS-133の詳細な薬理学的プロファイルを明らかにするため、VPAC2受容体遺伝子(VIPR2)の安定発現細胞株を作製し、細胞内シグナル経路に与える影響を解析した。そのなかで、KS-133がVPAC2受容体を介するホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の活性化を抑制することを見いだした(Asano et al., Front Oncol 12: 852358, 2022)。さらに、KS-133がVPAC2受容体阻害作用を示す構造生物学的メカニズムを解明するため、人工知能AlphaFold version 2.0と分子動力学シミュレーションを用いて検討を行った。その結果、KS-133と内因性リガンドであるVIPはともにヘリックス構造であり、VPAC2受容体上の相互作用残基が共通していることを確認できた。一方、受容体結合時のKS-133とVIPのヘリックスの角度が、約45度異なっていた。すなわち、KS-133とVIPは、異なる配向でVPAC2受容体に結合していることが明らかになった(Sakamoto et al., Biochem Biophys Res Commun 636: 10-16, 2022)。また、精神疾患におけるVPAC2受容体の病態的意義の解明を目指し、神経幹/前駆細胞特異的にVPAC2受容体を過剰発現する独自の遺伝子改変マウスを作製した。行動学的解析から、本マウスが感覚情報処理機能の障害や記憶能の低下を示すこと、さらに海馬体積が減少していることを発見した(Ago et al., Exp Neurol 362: 114339, 2023)。以上、本年度は予定通り研究が進捗し、その成果の一部について、国内ならびに国際学会において発表、そして国際学術誌に公表できたことから、概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、創製してきたVPAC2受容体アンタゴニストペプチドの安全性に関する基礎的知見を得るとともに、ペプチド投与時の脳内分布について検討し、薬効発現との関係性を解析する。またアミノ酸置換体や異なるペプチドとの結合体などを作製して、末梢からの中枢移行性を向上させる方法論について、引き続き検討を行う。また、統合失調症患者由来iPS細胞から作製した神経細胞において、多点電極装置等を用いた電気生理実験により、病態機序における回路レベルの考察を行う。
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