Project/Area Number |
20K00353
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹内 千代子 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (00330382)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | 芭蕉顕彰俳諧 / 花供養 / 成田蒼キュウ / 近世京都俳壇 / 南山城石清水八幡宮 / 八幡八景 / 近世後期京都俳壇 / 淀藩士俳諧連中 / 畑吟風俳諧資料 / 田川鳳朗 / 淀藩士の俳諧 / 高桑闌更 / 畑吟風 / 井華集 / 高井几董 / 俳諧 / 日本近世文学 / 日本文学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近世後期京都俳壇における独自の芭蕉顕彰活動が全国に波及したことを検証し、それが俳諧史における「芭蕉顕彰俳諧」と言えるまでになったことを論証しようとするものである。 半世紀以上にわたる洛東芭蕉堂の花供養会、向井去来の外戚である井上重厚による落柿舎の再興を中心に、京都俳壇の芭蕉顕彰俳諧を考察する。また、公家二条家の俳諧や淀藩士による俳諧にも影響を与えている芭蕉顕彰俳諧の活動を検証する。 それと並行して、加速度的に収集が困難になっている近世京都俳諧資料を継続的に収集し、公開していく。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は、次のとおりである。1「『花供養』翻刻集成Ⅱ―蒼キュウの時代 寛政十一年~文化十三年―」、2「『花供養』の入集者獲得」、3「石清水八幡宮『八幡八景』を読む」である。 1の『花供養』は、近世後期の俳諧の実態を時間及び地域から広く考察する資料である。印刷物並びにWEB公開した。先学によってまとめられている『時雨会』とともに重要であり、これらを総合的に研究することによって、近世後期の京都俳壇にとどまらず、全国に広がる俳諧の様相が見えてくる。芭蕉堂一世闌更と二世蒼キュウは師弟の関係であるが、師の芭蕉顕彰をよく理解し大きく展開させたのが弟子の蒼キュウである。その一端は、2の論稿でも指摘し、考察した。 全国に展開していく花供養会は、その展開の様相において堂主ごとに少しずつ異なるが、文化・文政期の社会情勢の変化は、俳諧にとっても重要な影響を与えている。即ち、俳諧師の社会的地位が高くなり、俳諧が社会に与える影響を看過できなくなるのである。また、芭蕉堂の堂主たちは、公家の二条家において俳諧を展開している。これは京都の特殊な状況であるが、これを巧みに利用して勢力の拡大と芭蕉顕彰とを実現していく。これらについての根拠の一端として、1の翻刻集成Ⅱにおいて、地域の俳人の動きを数値化して示した。前年度にまとめた翻刻集成Ⅰと併せて参照すると、より具体的なデータが得られる。 3の論稿は、コロナ禍の中、資料収集や研究会の発表がほとんど行うことができなくなった状況下で、少人数の三人のみの研究会を持ち、京都の南山城地域の文学・俳諧にテーマを広げて取り組んだものである。連歌から俳諧へと展開する様子からは、京都という地が育んだ詩魂が脈々と続き、近世後期の俳諧に繋がる様子が考察された。印刷物並びにWEB公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初から現在までの研究の進捗状況は、コロナによる移動制限の緩和が少しずつ行われ、現地調査の再開が一部で可能となり、総合的に判断しておおむね順調であると言える。 順調なものとしては、個人の所蔵資料を調査し、撮影し、考察した上で印刷物にまとめ、WEB公開できたことがある。畑家俳諧資料をもとにまとめた「淀藩士連中と芭蕉顕彰俳諧考―畑吟風俳諧資料と京俳壇」(2021年度)である。 また、コロナ禍の行動制限があった中で、少人数による研究会をもち、南山城地域の俳諧を考察し、研究の裾野を広げたことは有意義であったと考えている。これは、「石清水八幡宮『八幡八景』を読む」(2022年度)にまとめた。 一方で課題が残っているのは、『花供養』の翻刻である。翻刻集成Ⅰ(2020年度)、Ⅱ(2022年度)とおおむね順調に進み、現在も継続して同Ⅲに取り組んでいるが、当初の計画より遅れが出ている。一つは、コロナ禍の行動制限から、資料収集の遅れが生じていることである。二つには、ウクライナをはじめとする世界的な規模の紛争による社会情勢の悪化からの物価高騰である。パソコンなどの機器の高騰を招き、当初の予算では同程度の機能をもつ物品の購入が困難になった。現在使用のパソコンは、購入から五年が経過しもはや作業能力が十分ではなくなり、買い替えが必須であるが、これほどまでの社会情勢の急激な変化は予想できなかった。また、紙代の高騰は予想以上に急激かつ高額で、研究成果の公開及び普及のための印刷物が予定通りには成しえない状況である。 当初予期していないコロナ、世界紛争などの状況が重なっているが、かなり緩和されている行動制限のもと、研究と資料収集を加速させていく計画である。また、物価高騰は如何ともしがたいが、最大限の実現を図りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、研究課題「近世後期京都の芭蕉顕彰俳諧の研究」の最終年度となる。同課題のこれまでの成果は、『花供養』翻刻集成Ⅰ(2020年度)、「淀藩士連中と芭蕉顕彰俳諧考」(2021年度)、『花供養』翻刻集成Ⅱ(2022年度)、石清水八幡宮『八幡八景』を読む(2022年度)にまとめ、WEB公開した。『花供養』翻刻については続きのⅢの研究及び作業を継続している。ただし、予想以上に繁多なパソコン作業とパソコン機能の不足に時間を要し、また紙などの経費の高騰により、最終年度だけでは完結できないという状況である。その中にあって、Ⅲについてのみは、印刷しWEB公開を実現させるべく最大限の努力をする。 当初に計画していた京都嵯峨の落柿舎再興と井上重厚の研究と資料がまとめの段階に入り、これを最優先にして、学会発表と印刷物並びにWEB公開を行う。五升庵蝶夢の提唱した芭蕉顕彰は、京都俳壇にあって根強い勢力をもつ貞門派の流れを蕉門俳諧へと取り込むが、これをよく理解し扶けた重厚は落柿舎の再興に尽力した。ここは向井去来の別荘であり、芭蕉も滞在し『落柿舎日記』を著した所であるが、近世中期には廃れていた。これを再興する意義は、京都における蕉門俳諧が浸透し、モニュメントとして機能するということである。以後、現代に至る。また、再興にあたっては公家の後援があり、公家の俳諧参入は特筆に値する。この点についても考察を加えていく考えである。 上記の資料については、継続的に関連資料を収集し、その一部は発表してきたが、コロナが蔓延し、一部の資料収集と発表が困難であった。しかし、研究会が実質的に再開、各大学の図書館や研究機関の資料調査も再開され、研究環境が整いつつある現状で、研究及び成果の発表を加速させる方策である。
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Report
(3 results)
Research Products
(10 results)