Project/Area Number |
20K00967
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03020:Japanese history-related
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
麓 慎一 佛教大学, 歴史学部, 教授 (30261259)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ロシア / イギリス / 日本 / 小笠原 / オットセイ / アラスカ / ロッペン島 / 海洋秩序 / 領土 / ラッコ / アイヌ / 千島列島 / 岡本監輔 / 千島義会 / 郡司成忠 / 明治天皇 / カムチャッカ / ロシア領アメリカ / 海獣猟 / 三重丸 / 海洋法 |
Outline of Research at the Start |
帝政ロシアが露領アメリカ(アラスカ)をアメリカに売却したことによって惹起された環太平洋秩序の崩壊とその再編過程を解明する。ロシアの露領アメリカ(アラスカ)経営のために設立された露米会社は太平洋の北方海域(ベーリング海)だけでなく1840年までサンフランシスコにも拠点を置きサンドイッチ諸島などにも影響を与えていた。このロシアによる露領アメリカ(アラスカ)の衰退・崩壊・再編が日本に与えた影響を明らかにする。この再編とは、日本・ロシア・英領カナダ・アメリカが1911年に締結したオットセイ獣保護条約の締結を意味する。 この研究を推進することにより日本史と世界史を結びつけた新しい世界史を提示する。
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Outline of Annual Research Achievements |
帝政ロシアが露領アメリカ(アラスカ)をアメリカに売却したことによって惹起された環太平洋秩序の崩壊とその再編が日本に与えた影響を解明してきた。この課題について以下の3点で実績があった。第一に、ロシアの露領アメリカ(アラスカ)経営のために設立された露米会社は太平洋の北方海域(ベーリング海)だけでなく1840年までアメリカの西海岸やサンドイッチ諸島などにも拠点を形成していた。これらの情勢が日本、とりわけ小笠原に与えた影響を解明した。第二に、ロシアによる露領アメリカ(アラスカ)のアメリカへの売却が日本の北方海域に与えた影響を明らかにできた。これは海洋秩序の再編において環太平洋の毛皮獣の禁漁区域がアメリカ・イギリス(英領カナダ)・ロシアによって設定されたことが影響していた。この海洋秩序の再編の過程において千島列島のアイヌのシコタン島への移住が実施された。これとの関係で、移住させたアイヌを日本人化するために実施された「文明ノ世態」の視察(東京・京都の視察)の内実を解明できた。これは環太平洋の海洋秩序の変容が地域社会に与えた影響を解明できた、という点で大きな成果であった。第三は、海洋秩序が崩壊した時点におけるロシアにとってのクリル諸島の位置づけを明らかにできた。「カラフト島仮規則」(1867年)の締結時にロシアは樺太とクリル諸島の交換を提起する。この時、ロシアは次のように示唆していた。露米会社による毛皮獣(ラッコ・オットセイ)猟でクリル諸島におけるそれらは枯渇した。そして、その価値は低下したものの、鮭・鱒などが豊富なので漁業に重きを置いてる日本人にとっては価値がある。これは露領アメリカの売却の時点にあって、ロシアがクリル諸島に価値を見出していなかったことを明らかにできた、という点で重要である。このような認識が樺太・千島交換条約を促進した、と考えられる。以上の三点が実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況を概括し(2)と評した理由を記す。第一に、進捗状況は以下の三点にまとめられる。第一は、海洋秩序の再編における小笠原の位置付けの解明である。イギリスの軍艦ラレーが1837年8月に小笠原に滞在して調査した報告(イギリス議会文書)が大きな示唆を与えてくれた。この報告は、軍艦ラレーの艦長クインがイギリス商務監督官のチャールズ・エリオットに提出したもので、1837年8月9日付である。この報告により小笠原とイギリスの関係の形成が、その太平洋における無人の諸島の領有の志向と関連していたことが解明できた。第二に、ロシア領アメリカ(アラスカ)の売却によって崩壊した海洋秩序の再編において、バンクーバなどから毛皮獣猟のために千島列島に向かった外国船に小笠原で「帰化」した外国人が関係していたことを解明できた。この点については多くの言説があるが、史料によって明確に論証されてこなかった。第三は、樺太・千島交換条約後における千島列島のアイヌの動向である。千島列島のアイヌのリーダーのアレクサンドルは、明治15年の春季に欠乏した日用品を購入するために獣皮を携帯してカムチャッカ半島のヤウインに行った。彼は、そこで樺太・千島交換条約後にロシアへ移住した「前酋長」のキプリアンと会い、彼を含む七人と戻ってくる。この事実は千島列島とカムチャッカ半島の国境が機能していなかったことを示唆している。このように海洋秩序の再編と千島列島の関係を解明することができた。 このように海洋秩序の崩壊と再編が地域社会に大きな影響を与えていることが分かった。しかし、ロシアでの調査などが途絶しており、主要な史料群についてはすでに入手しているが、上記の派生した諸問題の解明のために補足的な調査が実施できていない。この点が(2)の評価になった理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
海洋秩序の崩壊と再編が樺太・千島列島・小笠原・竹島(現在のウルルン島)・琉球に与えた影響をさらに解明する。以下の二点を今後の研究のポイントにする。第一に、アヘン戦争による中国の弱体化が日本近海、とりわけ琉球に外国船が来る契機になっていたことを理解した。これまではロシア領アメリカ(アラスカ)のアメリカへの売却が海洋秩序の崩壊と再編において最も大きな要因である、との認識で研究を進めてきた。しかし、東アジアにおける清国の勢力のアヘン戦争による後退が、それと密接に関係してたことを理解するに到った。この点に留意して研究を推進する。アヘン戦争と琉球の関係についてはすでに示唆されている。アヘン戦争の影響が樺太や千島列島など北方地域においても存在することが判明した。この点をさらに研究する。第二は、小笠原の問題である。同地に最初に移住した外国人でボストン出身のアメリカ人が来島したとき小笠原は無人島だった。彼は同島をイギリス領である、と見做していた。その根拠が注目される。島民のウエブの家には、1827年にイギリスの軍艦の艦長が残した「銅板」が保存されていた。それには 小笠原の領有について「フロスソム」(船名)の船長「ヒーチー」は1827年6月、イギリス国王のチャーチルに代わって小笠原を領有した、と記されていた。このイギリスによる小笠原の領有を環太平洋における海洋秩序の崩壊過程の中に位置付ける。 これまで海洋秩序の崩壊と再編がアリューシャン列島など北太平洋海域での問題だと認識していた。しかし、実際にはサンドイッチ諸島・小笠原など環太平洋全体の問題であることが分かった。このような視点から研究を推進する。これによりサンドイッチ諸島の問題がアメリカ史で、小笠原の問題が日本史で分析されている、という研究上の分断を克服して、それらの相互関係を解明する。そして日本史と世界史を連動させた歴史像を提示する。
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Report
(3 results)
Research Products
(7 results)