前3千年紀シュメール・アッカド地方の政治と社会:出土史料の研究
Project/Area Number |
20K01006
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03030:History of Asia and Africa-related
|
Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
小口 和美 国士舘大学, 21世紀アジア学部, 教授 (90194521)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 和也 国士舘大学, 付置研究所, 研究員 (60027547)
森 若葉 同志社大学, 研究開発推進機構, 共同研究員 (80419457)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
|
Keywords | メソポタミア / シュメール / ウム・アル・アカリブ / 楔形文字資料 / 初期王朝時代 / アッカド / キシュ / 初期王朝期 / アッカド期 / ギッシャ / 南メソポタミア / 北部伝統 |
Outline of Research at the Start |
紀元前3千年紀後半の南メソポタミアの都市化の過程の地域差を、北のキシュと南のウム・アル・アカリブの研究成果を再検討、比較することで、当時の政治史を含む社会、文化の新たな見解を提出する。また、ウム・アル・アカリブ出土の楔形文字資料を手写し、翻字することで、ウム・アル・アカリブ遺跡がギッシャであったという説を補強するとともに、世俗的な支配者が南メソポタミアでも統治していたのではないかという新しいモデルの構築をおこなう。さらに、前3千年紀にキシュを中心とする北部地域において粘土板文字記録システムに改良が加えられ、キシュを通じてこのシステムがシリア地域などに伝播したとする「北部伝統」説の証明をはかる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
我々の研究は、メソポタミアの初期王朝時代第III期における、シュメール南部地方の政治、経済状況を明らかにする研究である。そのことを知るために重要な史料としてウム・アル・アカリブ遺跡より出土した粘土板群(楔形文字資料)があげられる。この研究ではこれらの資料の手写・解析を含めて当該時代の状況を解明しようとするものである。 ウム・アル・アカリブ遺跡はいわゆる「ウンマ地域(イラク、ジカール県)」内の大遺跡であって、当時の「ウンマ」国家(実際にはギッシャ)の主要都市であることはいまや確実である。また我々が扱う資料は、イラク考古学調査隊のハイダル・アルマモリ・オライビ博士(現バビロン大学教授)らによる発掘により出土した粘土板資料である。近年欧米で公刊されている「ウンマ地域」出土粘土板の報告は、すべて盗掘により将来されており、出土地不詳のものである。我々の研究で手写、解析を試みているウム・アル・アカリブ出土の楔形文字資料が一次資料としていかに重要であるかがわかる。 現在ウム・アル・アカリブ出土の楔形文字資料はイラク国立博物館(バグダード)に保管されており、発掘者ハイダル・アルマモリ・オライビ博士および我々日本人研究者に研究、出版の正式許可が与えられており、前川和也(国士舘大学)と森若葉(同志社大学)は週1日、ハイダル・アルマモリ・オライビ氏撮影の粘土板写真を材料として、前川研究室(京都市中京区)において、これらウム・アル・アカリブ出土の楔形文字資料の解析を継続している。 考古学的研究においては小口和美(国士舘大学)が、テル・グッバ出土の初期王朝第Ⅲ期からアッカドにかけての土器の出版に向けて、整理、研究を継続した。1978年から1980年までの資料であるため、手書きの資料となるため、リストの入力、図面などのデジタル化および、それにとも伴う入力作業が継続して進められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、前川は森とともに、イラク国立博物館所蔵のウム・アル・アカリブ出土の楔形文字資料を週1日、前川研究室(京都市中京区)において、手写、解析を継続しており、これまでほとんど知られることがなかったメソポタミアの初期王朝時代第III期末期におけるギッシャ(「ウンマ」)が果たした政治的、経済的役割をあきらかにしつつある。一方、手写・解析は順調に進んではいるものの、イラク国立博物館の閉鎖もあり、詳細写真等を得ることができなかった。 また、並行して前川は、ウル第3王朝期の行政文書を基礎して、この時代の土地制度、農業技術の解明に従事してきた関係から、シュメール農業の技法、技術の解明において大きな成果をあげ, 学界に寄与してきたことから、これらの特異な技法、技術は、シュメール人が住みついたメソポタミア最南部の沼沢地帯という特異な環境に適合していたのではないかと確信するにいたっている。2023年には、前川はこのことを解明する総合論考の作成作業を開始した。また、前川と森は、松島英子(法政大学)、春田晴郎(東海大)、川瀬豊子(大阪樟蔭女子大学)らとともに、イラン国立博物館蔵マルヤン(古代アンシャン;前2千年紀前半)出土文書の研究を継続した 小口は国士舘大学デジタル・アーカイブセンターの企画の元、国士舘史資料室のサポートを得て、2022年度、2023年度に膨大な発掘資料のデジタル化作業をほぼ終えたことから、入力作業を本格的に進められる状況になった。 2024年2月にハイダル・アルマモリ・オライビを日本に招聘し、解析の確認、出版の調整等をする予定で計画を進めていたが、イラク博物館が閉館となるなど、情勢が悪化し、就労先の渡航許可が得られなかったため、招聘は実現しなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
ウム・アル・アカリブ出土の楔形文字資料の手写・解析については、前川、森が継続して作業をおこなう予定である。一方、現存の写真では、まだ文書の完璧な解析がのぞめないため、イラク国立博物館が2024年4月に再開館されたとの情報を得たため、オライビの助力を得て、博物館での文書群の新写真の撮影を予定している。さらに、オライビ本人と直接協議をおこなったうえで、解析の精度を高める予定である。なお、最終的な解析の確認および出版に向けての協議そして、シンポジウムを開催するために、2月にオライビ、および、関係する海外研究者を招聘する予定である。そして、ウム・アル・アカリブ出土の楔形文字資料については、全ての資料の出版の草稿を仕上げることを予定している。また、それに伴う研究も進めて、社会、経済等を含めた総合的な研究としての原稿を仕上げることを予定している。 並行して前川は従来まで楔形文字学では扱われたことがない、メソポタミア南部沼沢地帯における耕地開発という主題で、シュメールの農業技法、技術に関して現在執筆中の総合的論考の出版を目指している。また、前川、森は松島、春田、川瀬と作業をおこなっている、イラン国立博物館の許可を受けて進めているマルヤン文書についての作業を完結させる予定である。 小口はデジタル化を終えた考古資料をデータベース化するための入力作業を継続させる予定である。5月末には国士舘大学のデジタル・アーカイブセンターの事業として、パイロット版の作成を終え、2024年度末に一部一般公開を目指している。なお、予定としては国際アーカイブ評議会の基準に基づくICA-AtoM のソフトウェアを使用し、国際的な枠組みでデジタルアーカイブなどで使用されているIIIF対応を予定している。また、それと並行して、初期王朝時代第Ⅲ期からアッカド期にかけてのテル・グッバの出土土器の出版も目指す。
|
Report
(4 results)
Research Products
(26 results)