Canonization and political order of South-west France in the High Middle Ages
Project/Area Number |
20K01068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
小野 賢一 愛知大学, 文学部, 教授 (30739678)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 西洋史 / ヨーロッパ中世 / 中世教会史 / 列聖 / 国制 / 聖人伝 / 俗権と教権 / 教皇権 / ヨーロッパ中世史 / 西洋中世史 / 聖俗権力 / 修道院 / 教会史 / 教会 / 国制史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は列聖(聖人認定)という視点から、俗権と教権の対立という二項対立的な叙任権闘争史にかわる重層的な新しい国制史・教会史の可能性を検討するものである。 本研究では、列聖のプロセスに着目し、列聖は教皇の主導性以前の聖俗の駆け引きで認可が決定されるのではないかという仮説を立てた。列聖のプロセスに着目することによって、列聖を教会制度上の閉ざされたシステムではなく、聖界・俗界に開かれたシステム、即ち聖俗のコミュニケーションの結節点として捉えうる。 列聖プロセスの分析は、英仏の狭間で混乱する中世盛期の西南フランスのような王権の十分に及ばない辺境地域の社会的秩序の解明に寄与するものと思われる。
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Outline of Annual Research Achievements |
列聖プロセスの各段階で発生する文書(列聖推進書簡、聖人伝、列聖請願書、列聖調査依頼文書、列聖教書)の体系的な収集に基づき『ベケット伝』の諸版が君主鑑的聖人伝というジャンルを確立させるに至る流れを列聖プロセスを段階的に分析することで解明した。その研究成果「トマス・ベケット列聖と12世紀の人文主義:列聖プロセスからの検討」をキリスト教史学会大会(南山大学、オンライン開催)で報告した。先行研究で看過された列聖請願書を用いて人的ネットワークや中世人の名誉に着目した政治文化史的アプローチの導入によってこの種の研究に新たな知見を加えた。そして古代の聖人伝の如く当該列聖請願書の中心思想は殉教思想であることを解明した成果発表「トマス・ベケット列聖:列聖請願書の分析を中心に」を藤女子大学キリスト教文化研究所で行った。2020年の愛知大学人文社会学研究所主催のシンポジウム「幸福を考える : 東洋、西洋、実証研究」の懸案の課題に取り組んだ。聖人伝の非定型表現に着目して文学研究や歴史研究は行われることが多いが、本研究では逆にその定型表現に着目し研究成果を『愛大史学』に論文として纏めた。BHL(Bibliotheca Hagiographica Latina)を有効利用し、Analecta Bollandianaで欠落部を補完する作業を行った。そして当該列聖教書の網羅的調査とラテン語原典史料からの訳出と註解を遂行し、列聖申請書と列聖教書の比較の着想を得た。また当該研究に必要な列聖教書はすべてラテン語原典史料から訳出し註解することができた。愛知大学世界史学専攻レクチャーとディスカッションを企画し、同大学世界史学専攻研究室で国制史に関する研究発表を行った。それを踏まえて、共著刊行に備えてヨーロッパ中世の列聖の国制的意義に関する研究(仮題:ヘンリ2世の贖罪と国制)の準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究の申請時に数度の在外研究における調査を企画していた。その調査・収集を基盤として史資料の解析作業をすすめ、本研究を推進する予定であった。だが、感染症による渡航制限のため、一度も在外研究を遂行できていない。このような状況が研究開始後3年間にわたり続いたが、ようやく光明が見え始めた。3年目にしてようやく多くの国で渡航制限、史資料閲覧制限などが撤廃されたからである。ゆえに今後は現地での調査という研究計画を速やかに遂行し、これまでの遅れの挽回に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
列聖プロセス初期段階の実態解明に関して列聖申請書が有効な史料となるが、その訳出・註解も完了し、成果の一端を昨年度研究会で報告した。その基礎的研究を土台とし本年は列聖推進者の私的な心性を西欧世界のグローバルな聖俗の関係のなかで考察し論述する。列聖プロセスの最終段階の実態解明に際しては列聖教書の分析が有効であるが、昨年度訳出は完成した。本年は註解を作成し列聖教書の個別分析を行う。次に受給者の異なる複数の列聖教書を照合し、教皇権、枢機卿団、カンタベリ教会、全イングランド教会、反対派の司教たちの党派性と心性を政治文化史的アプローチで解明する。列聖プロセスの研究をさらに深化させ段階的に捉えるために、通時的視点と共時的視点の両面から列聖申請書と列聖教書を比較対照する。この作業で古代教会の聖人認定文書(Acta, Passionesなど)の殉教思想の列聖申請書における残存と中世の列聖教書の奇蹟主義への傾斜を分析する。 列聖審査時に用いられた聖人伝について前年度の研究発表「トマス・ベケット列聖と12世紀の人文主義:列聖プロセスからの検討」で検討した。それを敷衍し列聖プロセスと聖人伝諸版の分析から、列聖後、君主鑑的聖人伝が著され、国制に影響を及ぼす可能性について指摘したい。列聖の国制的意義の解明に向けて事例としてプランタジネット朝イングランド王ヘンリ2世の贖罪と国制を取り上げる。フランク王国時代からグレゴリウス改革期に至る君主による贖罪と国制という一連の事象及びアレクサンデル3世期のシスマをめぐる国際的状況と複合国家の統治という全体の状況を踏まえた上で本研究課題の成果をグルーバルヒストリーのなかで捉え返す。その成果は次年度、入稿・公刊の予定である。この件に関連して愛知大学世界史学専攻主催の研究会で国制史の研究動向について討議した。その成果を本研究に還元するとともに次年度も研究会を開催する。
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Report
(3 results)
Research Products
(16 results)