Project/Area Number |
20K01107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03060:Cultural assets study-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 則英 日本大学, 芸術学部, 上席研究員 (10188039)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 写真史 / 日本初期写真史 / 文化財 / 初期写真原板 / 湿板写真 / 鶏卵紙 / 写真技術史 / 写真保存 / 写真原板 / 写真技法 / コロディオン湿板法 |
Outline of Research at the Start |
文化財としての歴史的な価値をもつ初期写真原板から、同時代印画技法によるプリント制作を行うことを通じて、写真原板の活用とその保存に寄与することを目的とする。とくに我が国において幕末から明治中期に使用されたコロディオン湿板法のネガ原板について、19世紀後半の標準的な印画紙であった鶏卵紙を使用して新たなプリントの制作を試みる。その際、原板に可能な限り負荷を与えずに新たなプリントを制作するための手法や諸条件を検討するとともに、その方式の確立を図る。それらを通じて文化財としての価値をもつ写真画像の活用と保存の両立を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、文化財として歴史的な価値をもつ初期写真原板から、同時代印画技法によるプリント制作を行うことを通じ、貴重な写真原板の活用と保存に寄与することを目的とする。とくに我が国において幕末から明治中期に使用されたコロディオン湿板法ネガ原板について、19世紀後半の標準的な印画紙であった鶏卵紙を使用し新たなプリント制作を試みる。その際、原板に可能な限り負荷を与えずに新たなプリントを制作するための手法や諸条件を検討するとともに、その方式の確立を図り、それらを通じて文化財としての価値をもつ写真画像の活用と保存の両立を目指すものである。 本研究の課題は、①湿板写真原板からの安全で高精細な複製ネガ制作方法の確立、②複製ネガから鶏卵紙にプリントする際の望ましい階調コントロールの条件解明、③原板から鶏卵紙に直接プリントする場合の安全な手法の確立等である。 2023年度は、過年度に実施した実験(復元制作した湿板写真原板を使用した解像力チャートの精密撮影や、湿板写真の感色性を測定するための分光写真の撮影等)を踏まえ、幕末明治期の歴史的写真が実際にどの程度の情報量を有するか確認するため、大学に所蔵される作例を主として調査した。具体的にはCharles WeedやBeato、日下部金兵衛らの歴史的鶏卵紙写真の目視および顕微鏡による詳細な観察等を中心に行った。 懸案であった海外資料調査については、令和6年2月4日から12日までの期間で米国ワシントンDCとニューヨークの資料収蔵機関において調査を実施した。国立公文書館では幕末遣米使節の湿板写真原板の予備調査を行い、ナショナル・ギャラリーおよびナショナル・ポートレート・ギャラリーでは19世紀の湿板原板からの鶏卵紙による復元プリントの調査、メトロポリタン美術館とデラウェア大学文化財保存修復学部では、それら歴史的写真の保存に関する意見交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画は遅れており、当初最終年度の2022年度から1年間の研究期間延長の申請を行った。2023年度の研究計画は、2022年度までに遅れを生じていた、あるいは未実施の部分を進めることであった。これらはA.複製ネガからの鶏卵紙によるプリントの制作(諸条件の詳細な検討)、B.湿板原板に負荷をかけずに密着焼き付けを行うための手法の検討、C.湿板原板資料調査(国内所蔵機関あるいは所蔵者、湿板原板のデジタルデータ取得可能か検討)、D.海外の原板収蔵状況や復元プリント等の事例調査(米国所蔵機関等)などである。 これらのうちDの海外資料調査については、昨年5月に新型コロナウイルス感染症の区分変更もあり影響が減少したので前記のように実施することができた。 A・Bについては、これまで計画通りあるいはある程度進捗してきたところである。とくにBに関する露光装置については、2021年度に特注で製作したものを継続的に使用して、自製した鶏卵紙の焼き付け実験を行っている。Aについては鶏卵紙の作成や焼き付け実験およびその結果の検討を行っているものの、過年度からの課題であった歴史的湿板原板からの高精細デジタル画像データの取得や複製ネガ作成が遅れているため、実際の複製ネガからの鶏卵紙によるプリントは進行していない。 またCの国内資料調査については未実施の部分が多いが、研究分担者として参加している他の基盤研究、あるいは別に参加している文化財系の研究プロジェクトによる資料調査を通じて、本研究に関係する貴重な知見を得ることができた。 以上のような遅延の状況から、2023年度は最終年度であったが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う補助事業期間延長の特例に基づき研究期間延長の申請を行ったところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2度の延長を行って2024年度が最終年度となる。最終年度の計画としては研究成果発表展示や成果発表公開シンポジウムの開催などを予定していた。しかし研究進捗は大幅に遅れている状況である。 進捗が遅れているのはA.複製ネガからの鶏卵紙によるプリントの制作(諸条件の詳細な検討)、B.湿板原板に負荷をかけずに密着焼き付けを行うための手法の検討、C.湿板原板資料調査(国内所蔵機関あるいは所蔵者、湿板原板のデジタルデータ取得可能か検討)などである。Dの海外における原板収蔵状況や復元プリント等の事例調査(米国所蔵機関等)は2023年度末に実施できたが、それ以外は2023年度も大きくは進んではいない。 残る研究期間で全てを進めるのは困難になってきたが、研究の核になる部分、とくに湿板原板からの高精細デジタル画像データの取得やデジタル系手法による高精細な複製ネガの作成実験、各種複製ネガからの鶏卵紙プリント作成実験は実施したいと考えている。 幸い感染症流行の状況も改善して研究協力者との作業も容易となり、2024年度に入ってからは、研究分担者を務める別の基盤研究とも協力して、デジタル出力による複製ネガの作成や、デジタルネガからの鶏卵紙プリント作成実験を始めているので、進捗が遅れていたA・Bの課題について、可能な限り実験とその結果の検討や再実験を実施したいと考えている。
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