Representations of Musical Gatherings in the Works of the Irish Revival
Project/Area Number |
20K12967
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
平繁 佳織 中央大学, 経済学部, 助教 (50825081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | アイルランド文芸復興運動 / ダブリン / 大衆音楽 / ポピュラー / コンサート / アイルランド / アイルランド文学 / 大衆文化 / 家庭音楽 / ケイリー / 音楽 / ナショナリズム / 文化復興 / 空間 / 社交 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、20世紀初めの「アイルランド文化復興運動」を支えた個人レベルの「自助と協力の精神」を踏まえ、文学作品や著名人の残した記述を手掛かりに、公式に記録が残っていないような小規模な音楽会に焦点を当て、その社会的な役割を再評価する。首都ダブリンと、ゴールウェイ、コーク、ベルファストの三都市における音楽活動の文学的記述をまとめ、それがどの程度アイルランド特有の文化だったと言えるのか分析すると共に、音楽を伴う集いの場が復興運動の中で人と人とをつなぐ役割を果たしていたことを明らかにしたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1890年から1930年までを射程に入れ、アイルランドの大衆音楽文化とアイルランド文芸復興運動のつながりを研究対象としている。昨年度は家庭(プライベート)における音楽活動とその文学表象を主な研究対象とし、いわゆる「二つのアイルランド」という言説において両端に位置する文化に重なりを見出した。今年度は、その重なりがポピュラーという単語を経由してゆるやかにつながっていることに着目し、この言葉がどのように認識されていたのか、当時の音楽シーンを例に考察した。現代においては、ポピュラー音楽というと、決まったジャンル、歌手などを指すこと、あるいは一定の売り上げといった商業的成功の程度をもとに判断することが多い。しかし、世紀転換期のアイルランドにおいては、ポピュラーという概念はあるコンサート形式に結びついていることを確認した。そのコンサート形式とは、複数のパフォーマーが一人ひとり交代で舞台に立ち、それぞれの芸を披露するというものである。これは19世紀イギリスにおいて最大の成功を収めたといってもよい、ミュージックホールを彷彿とさせる方法である。しかし、昨年度に検討した家庭音楽の伝統、とりわけアイルランド特有のケイリー文化もまた、このポピュラーな鑑賞方法と親和性が高く、完全にイギリス由来とも言えない。初年度の研究では、ポピュラーなものをイギリス的なものと同一視する傾向は時代的にも強いはずだったと考えたが、文化ナショナリズムの系譜に連なる組織もまた、どうやらこの形式を多用していたことが確認できた。とすれば、ポピュラー=宗主国の文化という単純な構図は成立せず、したがってポピュラーという語のもつ意味を再検討する必要があると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度も昨年と引き続き、研究計画の主眼としていた現地調査をすることはかなわず、国内からアクセスできる資料の分析が中心となった。それでも昨年の研究計画の見直しを経て、研究の焦点を絞ったことが功を奏し、今後の研究計画の輪郭がはっきりとしたという点で有意義な成果を得られたと考える。とくにポピュラーという用語の使用例の分析を中心に据えたことで、現地調査ではなくデジタル・アーカイブ等でアクセスのしやすい新聞や雑誌を主な研究対象とすることになり、研究が進めやすくなった。しかし、ダブリンに渡航してのアーカイブ調査は、コンサートのプログラムなど、いわゆる雑多な(miscellaneous)史料を扱うことができるため、いまだ本研究の要となることには変わりなく、それが実現できなかったことから、進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的は、アイルランド的なものとイギリス的なものが入り混じった大衆文化の中で、絡まりあった糸をほぐしていくイメージのアプローチを考えていたが、本研究の時間的な制限をふまえて、ある文化の起源をたどるのではなく、ミュージックホールの表現形式とアイルランドのケイリー文化に共通項があることを前提とし、その重なりこそが同時代の音楽文化を活性化していて、ひいてはそれを利用した文芸復興運動をも支えたと考えるようになった。そのうえで、ポピュラーなコンサート形式が、音楽が文学作品や伝記といった一次文献にどのように描かれ、表現形式にどのような影響を及ぼしているのかを、具体的な作品をとり上げていくことが今後の課題である。研究対象としている時代の、いわゆるキャノンの多くには目を通してあるので、今後はマイナー作品、作家の文章を探ることが主な作業となるだろう。最終年度であることもふまえ、たとえ海外調査ができなかった場合に備えて小説や伝記といった文字媒体の調査を主軸に続けていくつもりである。
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Report
(3 results)
Research Products
(2 results)