Project/Area Number |
20K13014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
杉山 豊 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (50733375)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 歌曲源流 / 女唱歌謡録 / ソウル方言 / 声調 / アクセント / 長母音 / 歌曲 / 連音標 / 中期朝鮮語 / 『歌曲源流』 / 校勘 / 二数大葉 / 対校 / 朝鮮語 |
Outline of Research at the Start |
本研究が対象とする朝鮮の「歌曲」は、現代に至るまでの楽曲の変遷を、文献上最も古くまでたどり得るジャンルの一つであるのみならず、その旋律に15、16世紀ソウル方言のアクセントを反映していることが明らかになっている。 その研究で最も拠り所すべきは、19世紀の歌集『歌曲源流』に記された「連音標(≒節博士)」であるが、その表記には同時代の異本間でも出入りが見られる。 本研究は、朝鮮語アクセント史の観点から『歌曲源流』諸本の連音標に検討を加え、過去のアクセントを最もよく反映していた原点の姿を究明することで、同文献を朝鮮語アクセント史資料として安心して用いるための「地ならし」をすることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度には、前年度に作成した『歌曲源流』系歌集諸本対照‘連音標’データベースに基づき、‘連音標’で示される旋律と中世期アクセントとの対応上の例外について解釈を試みた。具体的には、後代的な――16世紀末の傍点(声点)表記廃止以降、『歌曲源流』の編まれた19世紀後半までの間にソウル方言において出現したと考えられる――言語事実の反映が、かかる例外をもたらした可能性について検討を行った。想定される後代的言語事実は、主として二種類である。第一には、ピッチの対立が失われたことによる、平声(L)と去声(H)との合流であり;第二には、中世語と現代語との間に認められる、「上声:長母音」(及び「平・去声:短母音」)という対応に対する例外の存在である。なお、今年度は固有語のみを検討の対象とした。また、現代語の母音長は、国立国語院『標準国語大辞典』(オンライン版)に主として依拠し、必要に応じてGale, James S.編『韓英字典』(1897)、Gale, James S.編『韓英字典』(1911)、朝鮮総督府編『朝鮮語辭典』(1920)を併せて参照した。 検討の結果は以下のとおりである。『歌曲源流』国楽院本(『源・国』)と『女唱歌謡録』東洋文庫本(『女・東』)との状況を比較したとき、前者では中世語における平声:去声の区別がよく保たれているのに対し、後者ではそれが統計的に認められなかった。上声の反映についても様相は類似している。『源・国』においては上声が比較的よく旋律に反映されるのに対し、『女・東』においては例外が増加し、かつ、それら例外のうちには、20世紀ソウル方言の言語事実と方向性を同じくするものが複数確認された。音楽史研究の教える所によれば、歌曲における男・女唱の分化は19世紀前半に完了している。19世紀中・末葉当時、女唱歌曲には独自の革新的な伝承の系譜が存在した可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究遂行内容のうち、『源・国』と『女・東』と対比は、就中、現代語における母音調との関連からの接近は、当初より計画せられたものではなかった。しかしながら、かかる方面からの検討の結果、『歌曲源流』と『女唱歌謡録』との有する音韻史資料としての性格の相違に、一つの仮説を得ることができた。またそれは、音楽史研究の分野においても、何らかの意義を有し得ると期待せられる。 また一連の検討の過程で、既存のデータベースにおいて、現代語の母音長の情報を大幅に充実させることができた。これは今後、『歌曲源流』系歌集諸本のアクセント史資料としての性格を解明する上で一つの強力な武器となり得るのみならず、ひいては、近代語、現代語に亘る間の朝鮮語アクセントに対する通時的研究の土台となるものと期待せられる。 よって、これまでの研究進捗状況を、上記の通り評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究は、基本的に昨年度の路線の上に計画されている。すなわち、『歌曲源流』系歌集諸本において‘連音標’で示される歌曲の旋律と、中世期アクセントとの対応上の例外についての、朝鮮語音韻史の観点からの解釈である。今年度においては主に以下の点において拡充を行う予定である。 第一には、検討対象の拡大である。昨年度には検討対象を固有語のみに限っていたが、今年度はこれに加えて漢字語についても検討を行う。近年の先行研究を参照するに、中世語と現代語との間における「平・去声:短母音」、及び「上声:長母音」の対応には、予想以上の例外が存在するらしい。『歌曲源流』の伝える旋律に反映された漢字音が、アクセント(声調)の観点からいかなる特徴を有するものなのか、明らかにする。併せて、旋律へアクセント反映の様相が、固有語におけるそれと比較したとき、相違が見られるか否かについても検討したい。 第二には、現代語の母音長に関するデータの充実である。具体的には、『韓仏字典』(1880)等、より多様な準拠資料を活用し、19~20世紀における母音長の微視的把握につとめる。昨年度までは、母音長確認の根拠として、主として国立国語院『標準国語大辞典』(オンライン版)を用いていた。然るに、該書の母音長は、殊に漢字語については多分に、‘標準語’辞典という性格に起因する規範意識の下、整えられている可能性が、先行研究により示されている。可能な限り、『歌曲源流』編纂当時の言語事実に迫り得ることを目指したい。
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