Project/Area Number |
20K20573
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Pioneering)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 40:Forestry and forest products science, applied aquatic science, and related fields
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 篤 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (50344495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松石 隆 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (60250502)
向井 徹 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (60209971)
藤森 康澄 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (40261341)
別府 史章 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10707540)
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Project Period (FY) |
2020-07-30 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥25,610,000 (Direct Cost: ¥19,700,000、Indirect Cost: ¥5,910,000)
Fiscal Year 2025: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2024: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2020: ¥7,800,000 (Direct Cost: ¥6,000,000、Indirect Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | 動物プランクトン / カイアシ類 / 海洋生態系 / 気候変動 / 未利用資源 / オイル / サプリメント / オキアミ類 / 資源量 / 漁具漁法 |
Outline of Research at the Start |
IPCC第51回総会にて、「温暖化による海洋環境の変化により、今世紀末までに、全世界海洋の海洋生物の量が最大で20%減り、漁獲量も最大で24%減少する可能性がある」という内容が発表された。本研究は魚類など高次栄養段階生物の資源が枯渇する中、従来漁獲対象としてこなかった一次消費者(動物プランクトンのカイアシ類)を対象とした漁業「かいあし漁業」を設立させることを最終目標として、カイアシ類の資源量・漁獲可能量の推定、計量魚群探知機による分布・現存量の推定と採集層の特定、カイアシ類生態の解明、漁獲方法の確立を行い、漁獲されたカイアシ類から未利用資源の有効利用法を探る研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
海洋生態系において対象生物の栄養段階を評価する手法として、炭素・窒素安定同位体比がある。今年度は、西部北太平洋における動物プランクトンを主とする生物群集の窒素・炭素安定同位体比の空間変動パターンを明らかにするため、以下の3つの観察を行った。すなわち、①海域による変化(亜寒帯と移行領域の比較)、②海表面から水深3000 mまでの鉛直的な変化、③動物プランクトンサイズクラス及び緯度による変化、である。 まず①の海域による変化(亜寒帯と移行領域の比較)では、海洋表層の0-150 m間における動物プランクトンから魚類の安定同位体比を測定し、両海域にて炭素安定同位体比と窒素安定同位体比の間に有意な関係式があるものの、その回帰式は海域により有意に異なる事を明らかにした(p<0.0001, ANCOVA)。②の鉛直的な炭素安定同位体比と窒素安定同位体比の変化は、亜寒帯域と移行領域では水深との間に有意な関係式は無いものの、亜熱帯域においては窒素安定同位体比が水深増加により有意に増加する関係式があることを明らかにした。窒素安定同位体比は栄養段階の指標であり、これが深度増加により高くなっていたのは、深海になるにつれて、食う-食われるの関係が重なり合う、リパッキング(Re-packing)効果の反映と解釈された。③のサイズクラスの影響として、表層動物プランクトンの窒素安定同位体比は、大型なサイズクラスほど窒素安定同位体比は高いことが示された。大型なサイズクラスの窒素安定同位体比が高いことは、大型な動物プランクトンほど、高次栄養段階に属していることの反映と考えられた。 これら一連の研究結果は、動物プランクトンの主要構成生物である「カイアシ類」が高次生物や鉛直的な物質輸送に果たす役割を示したもので、国際誌に発表後、プレスリリースもされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前述の炭素窒素安定同位体比に関する研究に加え、脂質特性分析に関する分析も行われ、海域による脂質特性を明らかにすることが出来たためである。 動物プランクトン試料は、北海道大学水産科学研究院付属練習船おしょろ丸により、2023年6月から7月にかけて北海道沖からベーリング海を結ぶ海域の9地点にて夜間に水深0-50 m間をネット曳きして採集された。海域ごとに採取されたプランクトン試料は種の分別はせず脂質抽出に供した。総脂質はクロロホルム/メタノール混合溶媒で抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)により、脂質組成と脂肪酸組成を分析した。 採取緯度が異なる9地点の試料間で脂質含量、脂質組成、脂肪酸組成を比較すると、海域ごとに差が見られ、特に、北緯44度を境に高緯度側で試料重量当たりの脂質含量が多く、TLCの結果からワックスエステル(WE)割合が高いことが分かった。この傾向は、体内にWEを蓄積するNeocalanus属の北緯44度以北での分布と一致し、脂肪酸組成もC20:1、C22:1などのNeocalanus属の特徴を反映していた。次に、北海道沖で6月上旬(往路)と7月下旬(復路)に採取された時期の異なる試料間で比較すると、6月上旬ではエイコサペンタエン酸(EPA)が15%、ドコサヘキサエン酸(DHA)が23%に対し、7月下旬ではEPAが10%、DHAが27%とn-3PUFAの割合に変動が見られた。このことは採取海域における動物プランクトン群集の種組成の変化、あるいは餌である植物プランクトンの季節遷移を反映している可能性が考えられる。以上、採取海域や季節によって動物プランクトン群集から得られる脂質特性の違いを明らかにした。新たな水産脂質供給源として動物プランクトンを漁獲対象にする上で重要な指標になる知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これら今年度に行われた、炭素窒素安定同位体比や脂質特性分析に関する情報は、今後に「かいあし漁業」を産業化にする際に、極めて重要な情報を含んでいる。その一方で、再生可能資源ではあるものの、カイアシ類が今後の気候変動に対して、どのような応答を示すのか、また物質循環に果たす役割が、漁獲することにより、どのように変化するかについての知見は乏しいと言える。 このような背景から、今後は①水温に対するカイアシ類の成長速度の応答を飼育実験により明らかにすることと、②カイアシ類主要種が何を食べて何に食べられているかという、海洋生態系の食物網における、機能的役割の評価をすることを目的として研究を推進したい。 このうち①の水温に対するカイアシ類の成長速度の応答は、北部北太平洋における動物プランクトン相に優占するカイアシ類を対象として、水温を3条件(3, 7, 11℃)に変えたArtificial Cohort法によって成長率を明らかにする予定である。環境要因として、水温に加えて、溶存酸素、餌の指標のクロロフィルaを測定し、これら環境要因が3種のカイアシ類の成長率に与える影響を評価することを目的として、約2日間の飼育により優占種の成長率に与える水温の影響を評価する予定である。 一方、②のカイアシ類の機能的役割については、2021年夏季に北緯47度線に沿って行われたカイアシ類の排糞実験による糞粒観察を通して、摂餌生態(摂餌嗜好性)の種間差を明らかにする。また2ヶ月に1回ほどの頻度である、北大水産学部附属属練習船うしお丸の航海に乗船し、同航海で採集されたカイアシ類を用いた飼育実験を行い、同化効率をRatio Methodで明らかにする。また摂餌対象粒子として、マイクロプラスチックも用いて、マイクロプラスチックの存在が、カイアシ類の摂餌生態や同化効率に与える影響も、実験的に明らかにする予定である。
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