労働者は、仕事が原因で病気になったり負傷したりすると、災害補償制度を利用できる。もっとも、民間労働者と公務員では別々に制度が構築されており、制度の利用条件が類似しつつも異なっている。そのため、実務上、公務員が民間労働者よりも救済されにくいという場面に遭遇することがある。これまでも、かかる差異の存在と問題性は指摘されてきたが、現行制度の差異の当否を検証した学術的な研究は見られなかった。そこで、本研究は、災害補償制度の実体・手続の両面において官民間の差異が生まれた原因を歴史的観点から分析するとともに、英国法との比較を交え、差異が存在することの当否を評価し、制度の改革に向けた議論を試みるものである。
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