野生ニホンザルにおける社会性の種内変異から探る社会的知性仮説の検証
Project/Area Number |
20K22284
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0110:Psychology and related fields
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
貝ヶ石 優 大阪大学, 人間科学研究科, 特任研究員 (90884031)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2021)
|
Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | 社会ネットワーク / 社会的複雑さ / 毛づくろい / ニホンザル / 社会的知性仮説 / 種内変異 |
Outline of Research at the Start |
ヒトをはじめとする一部の動物において高度な認知能力が進化したのはなぜか。この問いに対して、社会的知性仮説では集団生活に伴う複雑な社会的環境への適応が認知能力の進化を促したと予測する。本研究では、複数の野生ニホンザル集団を対象にこの仮説について検証を行う。先行研究から野生ニホンザルの社会構造には集団間で大きな地域差が存在することが知られている。またそれぞれの集団内でも、各個体が持つ社会ネットワークの複雑さは異なる。ニホンザルが示す社会性の種内変異に着目し、社会性と認知能力との関連について統合的理解を目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症の流行のため、研究実施に必要なフィールドワークの実施に大きな支障が生じた。そのため、研究計画を変更し、すでに収集済みのデータに関する分析を主に実施した。 淡路島ニホンザル集団 (以下淡路島集団) において、2017年から2020年に収集した毛づくろいデータについて分析を行った。通常ニホンザルでは、毛づくろいは2頭間のみで行われる (2頭毛づくろい)。しかし淡路島集団では、観察期間中記録された毛づくろいのうち10%以上が、3頭以上が同時に参加して行われる多頭毛づくろいであった。この生起率は、先行研究で示されている他の地域集団およびニホンザルの近縁種であるアカゲザルにおける生起率と比較して高い値であった。淡路島集団に見られる高い寛容性が、2頭毛づくろいよりも複雑な多頭毛づくろいという毛づくろい様式を可能にしていると考えられた。また淡路島集団では、ほとんどの多頭毛づくろいが集中型として生起し (95.6%)、毛づくろいの持続時間も集中型は連結型より長かった。さらに、社会ネットワーク分析の結果、2頭毛づくろいは多様な個体間で広く行われるのに対し、多頭毛づくろいは同じ組み合わせの個体間で繰り返し行われていた。淡路島集団では、多様な個体と繋がりを形成するための2頭毛づくろいに対し、既存の社会的絆をさらに強める機能を持つ多頭毛づくろいという、2つの毛づくろい様式が存在すると考えられた。以上の結果は、2021年7月に国際学会 (Behavior2021) において発表済みである。 また、同集団においてこれまでに収集した尿サンプルから、尿中オキシトシン濃度の測定を行った。現時点では、詳細な分析を行うにはサンプル数が不足しているため、フィールドワークを再開し次第、さらなるサンプル収集および測定を実施し、個体の社会性および認知能力に関する内分泌的基盤について明らかにする。
|
Report
(2 results)
Research Products
(2 results)