Project/Area Number |
20KK0034
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (B))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 7:Economics, business administration, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 晶寿 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30293814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 健介 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任講師 (00435538)
服部 崇 京都大学, 経済研究所, 特任教授 (30837117)
三重野 文晴 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (40272786)
伊藤 亜聖 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60636885)
Lim Guanie 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (60931574)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥18,850,000 (Direct Cost: ¥14,500,000、Indirect Cost: ¥4,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 一帯一路戦略 / 債務の呪い / 東南アジア / 付加価値所得 / ガバナンス |
Outline of Research at the Start |
本研究は,一帯一路戦略(BRI)の下で中国が進めている接続性インフラ整備への投融資のホスト国の債務・経済構造・ガバナンスへの影響を,「債務の呪い」の観点から,日米欧ASEANの研究者が共同でASEAN諸国を対象とした実証分析を行う.そして好影響を拡大し悪影響を最小化する政策・制度・移行戦略に関する含意を抽出して対応策を構想し,欧米日ASEANの対応策構築への指針を与える.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究を構成する4項目(項目A:分析枠組み構築,項目B:貿易・経済構造分析,項目C:債務・財政の持続性とガバナンス分析,項目D:対応策分析)のうち,項目Aに関しては,外国研究協力者からの包括的な反論を受けたことから,それを昇華させた枠組みを再度構築することとなった. 項目Bの内,デジタルインフラ整備・法整備に関しては,一帯一路沿線国等のデジタル分野における政府規制に中国の関与が与えた影響「中国効果」の存在を,パネルデータを用いて「差分の差」分析により明らかにし,トロント大学にて研究報告した.国家送電網の買収に関しては,フィリピンでは中国企業への警戒感も相まって,送電網新設・更新に目に見える形で貢献していないこと,ラオスでは水力発電の季節変動調整と中国建設の高速鉄道の電源供給に貢献しているとの知見を得た.また貿易影響に関して,マレーシアのヤシ油を事例として分析した結果,貿易構造にもレント蓄積にも大きな影響を及ぼしていないとの知見を得た. 項目Cの内,債務・財政の持続性に関しては,ラオスでの聞き取り調査と部分開通した高速鉄道の実地視察から,中国のラオスに対する高速鉄道等の経済インフラ整備支援と財政・対外債務悪化が同時進行しているがいまのところ破綻には至っておらず、一方である程度の経済波及効果が期待される見通しを得た.これに関係してラオスの主要企業の資金調達に関する研究を国際学会で報告し,東アジアの資本フローの現状に関する論考を出版した.中国との貿易・直接投資による政治経済構造への影響に関しては,ラオスに関して特に公的債務に占める割合の高いエネルギー(電力)セクターを,同国の関連国家計画の変容に配慮して検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,国内外での資料収集と聞き取り調査,研究会・学会報告を再開し,研究成果をブラッシュアップした. 項目Bのデジタルインフラ整備・法整備に関しては,デジタル貿易に対する規制指数のデータをアップデートし,新たなデータを用いて分析した結果,中国の関与が各国の規制の高まりと相関していること,しかしその効果には異質性もあるとの結果を得た.国家送電網の買収に関しては,再エネの大量導入を可能にする電力グリッドへの移行の文献レヴューを行って分析枠組みを構築し,この観点からフィリピンとラオスの国家送電網買収の影響を分析し,国際学会及び海外研究協力者であるラオス国立大学のプーペット准教授の主催する国際研究会で報告してフィードバックを得た.対中貿易依存度上昇の貿易構造変化に関しては,マレーシアの主要産業の油やしを対象に検討したものの,大きな変化を見出すことはできなかった.Value Chain分析による中国依存度の定量分析に関しては,構築した分析モデルを動かすのに必要なデータを収集した. 項目Cの債務・財政の持続性に関しては,ラオスの財政・対外債務状況の聞き取りと高速鉄道の視察などにより,この数年の状況変化を把握し,今後の研究方針を検討した.そしてラオスの主要企業の資金調達に関する研究をEast Asian Economic Association (2022年8月マレーシア)で報告した.また,東アジアの資本フローについての最近の動向についての論考を学術誌に寄稿した.ガバナンスへの影響に関しては,中国投資への依存度が高いラオスの電力セクターを対象に,投資動向の変容とその電源開発計画などへの影響を検討し,結果をアジア政治経済学会及び上記ラオスでの研究会で報告した. またマレーシアでの聞き取り調査に基づいて,中国のインフラや都市建設への投資が政治体制に及ぼした影響に関する分析を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,遅れがちであった研究の進捗を取り戻し,当初予定していた若手研究者の国際的な場所での研究成果報告と,そこでのフィードバックを反映させた英文書籍出版及び英文学術誌での成果報告を完遂させる. 項目Aに関しては,本研究の遂行期間に発生したCOVID-19や対中債務返済の困難化による変容を踏まえて,BRIのナラティブを再検討し,その成果を英文書籍で公表する. 項目Bのデジタルインフラ整備・法整備に関しては,分析の解釈と議論を発展させ,分析成果を英文書籍で公表する.国家送電網の買収に関しては,2022年度に行った持続可能な電力グリッドへの移行の観点からのフィリピンとラオスの事例分析を完遂し,成果を英文書籍で公表する.Value Chain分析による中国依存度の定量分析に関しては,収集・更新したデータに基づいてモデル分析を行い,結果を英文書籍で公表する. 項目Cの債務・財政の持続性に関しては,ラオスを対象にマクロ経済の不安定性の観点から研究を取り纏めて研究集会で発表し,国際学術誌への掲載を目指す.また,より広汎な資本フローの最近の変化について,米国金利の引き締めとウクライナ戦争の影響,米中対立という新しい展開を踏まえた状況変化を捉える論考を執筆すべく研究を進める.ガバナンスへの影響に関しては,まずラオスの電力セクターの計画に着目した計画の変容とその課題を検討し,その上でベトナムやタイなどとの比較検討を行い,米国の研究者らと研究会や学会発表を行う.さらに中国が投融資を行った大規模開発事業による分配影響とその後の政治的困難の関係を明らかにする. そしてこれらの研究成果を, 東アジア経済学会,アジア環境資源経済学会,アジア研究学会等の国際学会で報告し,フィードバックを研究成果に反映させて,英文書籍や英文学術誌で公表する.同時に,今後の国際共同研究の発展の手がかりとする.
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