Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
非増殖性の細胞である細胞において、cAMPの新規標的分子であるEpacによるアポトーシスの検討はなされていない。非増殖性細胞のアポトーシスの機序を理解することは細胞死に起因する疾病の解明に大きな意義を持つため、本研究では大脳皮質細胞におけるEpacによるアポトーシスの分子機序を解明し、in vivoでその生理学的意義を検証することを目的として行った。1. Epacによるアポトーシス誘導の分子機序の検証。大脳皮質神経細胞において、Epacを活性化するとミトコンドリアの膜電位の消失が認められた。そして時間依存的にBimの増加、Bcl-2との結合量の増加が認められた。また、Bimの転写に関わる分子の一つであるp38MAPKの阻害やBimの発現抑制によりEpacによるアポトーシスの誘導が抑制された。これらのことより大脳皮質細胞においてEpacによるアポトーシスの誘導はBimを介していることを明らかにした。2. 個体レベルでのEpacのアポトーシスに対する役割の検証。Epac1欠損マウスを作成し3-NPによるアポトーシス誘導モデルを用いて野生型マウスと比較した。Epac1欠損マウスの大脳皮質および線状体領域において、3-NPによるアポトーシスおよびcleaved caspase3の発現が有意に抑制されていた。またEpac1欠損マウスの大脳反質神経細胞では、Bimの発現が減少していた。このことよりEpacは3-NPによるアポトーシスに対して保護作用を示すことを明らかにした。以上のことよりEpacによる神経細胞特異的なアポトーシスがBimの発現によって制御されていることを明らかにした。そしてEpacの欠損は生体内の神経のアポトーシスに対して保護的な効果を示すことから、Epacの阻害が神経変性疾患の治療標的となる可能性が示唆された。上記研究結果は国際誌に投稿中である。