Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
ABO式血液型遺伝子の発現調節について、クロマチンリモデリングの観点から研究を進めた。遺伝子の転写調節には数十キロベースから百キロベース以上離れた領域が関わることが、グロビン遺伝子、HLA遺伝子、インターフェロンγ遺伝子などで明らかにされてきた。これらの発現調節には転写因子CTCFが関わり、クロマチン構造をループ構造にしたり、或いは核基質と結合したりすることによって、クロマチン構造に複雑な3次元構造をもたらし、プロモーター領域と他の領域との相互作用を生み出すことによって、転写調節に影響が及ぼされることが判ってきた。そこで、今回、研究代表者は、ABO式血液型遺伝子の発現がクロマチンリモデリングに基づくものであるか否かを検討するため、転写因子CTCFの発現をノックダウンした胃癌培養細胞を作製したところ、ABO式血液型遺伝子の発現が約2倍となり、抗原の発現が増加した。また、転写因子CTCFは細胞分化・成熟に伴い、その量が増加することが最近示されている。従って、この結果から、転写因子CTCFは、1)クロマチンリモデリングを介して、ABO式血液型遺伝子の発現に対して負に作用し、2)細胞分化に伴うABO式血液型の発現に影響を及ぼし、3)ABO式血液型の細胞特異的発現、例えば、胃には血液型物質が多いが、大腸には少ない、等の消化管における血液型物質の勾配に関わる可能性が示唆された。今後は、実際にCTCFがABO遺伝子の遺伝子調節領域に結合することを証明したい。