Research Abstract |
複式学級における授業の進め方について,同単元同内容から異単元異内容へ移行しつつある。これは,転校した場合の問題や学年の系統性重視の考え方がその背景になっている。異単元異内容になると間接指導(教師が児童から離れる時間)が必然的に生まれる。複式学級の学習指導の困難さや不安,大変さの原因ともなっている。そこで,他の附属校を含め,従来のずらしとわたりによる授業から子どもたちがリーダーとなって自ら進める指導の研究も盛んに行われている。 授業づくりを進めるにあたって,複式学級の特性をどう教師が受け止めるか,その考え方が重要になる。複式学級での特性は,少人数であること・異学年で構成されていることの2つであるが,これらをデメリットとしてとらえるのではなく,メリットとしてとらえたい。その中でも,一教室に異学年がいることを活用し,交流を図ることは,「複式だからできる」「複式にしかできない」学習指導として意義が深いと考える。 これまでに,国語科においては,異学年交流の場を仕組んだ文学的文章の指導のあり方を研究してきた。同じ主題の文学作品を学年別に読んで交流を図る実践や一つの作品を学年別に異なる視点から読んで交流を図る実践がそれにあたる。 今回の研究では,作者の思想が色濃く表れている「宮澤賢治」の作品を題材に,作者の思想や生き方・他の作品と関連づけながらの読みの実践を行った。そうすることで,同一作者の作品をそれぞれの学年で学習する,作者の思想や生き方と関連づけた読みの比較が可能となり,異学年交流の場に必然性をもたせることができた。 これからの複式学級の授業研究において,異学年の交流を充実した方途を探ることは,重要な視点になるであろう。
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