Research Abstract |
本研究の目的は,高等学校理科の観察・実験活動において,メタ認知を活性化させる学習指導が,高校生の観察・実験活動に対する認知や態度(以下,「理科実験観」とする)のポジティブな変容に効果があるかどうかついて実践的に検討することであった。 まず,メタ認知の活性化を量的に測定するためにメタ認知尺度を準備した。そして,高校生の理科実験観の下位概念を抽出するために質問紙を作成した。公立高等学校3校389名(1学年169名,2学年165名,3学年55名)を対象として,因子分析によって理科実験観の下位概念を抽出した。第1因子には「メタ認知的方略志向」,第2因子には「仮説検証方略志向」,第3因子には「意味理解方略志向」,第4因子には「可視化方略志向」,第5因子には「新しい発見や気づき」,第6因子には「実験プロセスの重視」の6つの因子(計20項目)が抽出された(以下,本質問紙を「理科実験観尺度」とする)。 次に,メタ認知を活性化させる学習指導として次のように考え,理科総合A「化学反応式と量的関係」において実践事例を開発した(2月下旬に実施)。"生徒が科学的概念を学習した後に,科学的知識を活用して解決する現実的な課題を提示する。生徒は,グループで課題解決のための仮説と目的を設定し,実験方法を計画・実行する"。メタ認知尺度と理科実験観尺度の観察・実験活動前の測定結果を統制変量,授業(処遇授業と対照授業)を独立変数,観察・実験活動直後の測定結果を従属変数とする共分散分析を行った。その結果,処遇群(38名)の「他者との関わりによるメタ認知」の平均値は,対照群(39名)のそれより有意に高かった。また,処遇群の「仮説検証方略志向」,「新しい発見や気づき」,「実験プロセスの重視」,の平均値は,対照群のそれよりも有意に高かった。
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