Research Abstract |
目的現在,衣類は大量生産,大量消費,大量廃棄され,伝統的な繊維を使用した衣類の割合は低下し,手織りの技術は衰退している。科学技術の進歩に伴う衣生活の変化がもたらした環境問題は,あらたな生活文化を創造する担い手として早急に取り組まなければならない課題となっている。世代を超えて受け継がれてきた伝統文化「織物」から自然と調和した布を大切にする文化の存在は,現在のライフスタイルの好対照をなす。この認識から出発し,持続可能な社会の実現のための衣生活文化を創造する教材開発を目的とした取り組みである。 方法伝統的織物大島紬の生産工程の見学および広島大学附属中・高等学校の高校生を対象とした伝統的な衣生活を学ぶ実験授業を行なった。 結果授業実践から生徒は興味関心と学びにおいて,高い効果を上げた。大島紬の泥染めの泥の特徴,植物性染料となる奄美大島に自生するシャリンバイの特徴を知ること,さらに現在では大量生産される被服材料の染料として使用されなくなった原因など,切実な衣生活をめぐる課題に結びつけるような授業展開が可能であることが明らかになった。 卓上手織り機や空き箱を利用して自作した手織り機で布を織る実習では,織り機の構造を知り,布の組織を理解した。また,紀元前に人間の知恵によって生み出された織り機の構造が,現代にまで受け継がれてきたという事実とともに,このライフスタイルが時間と労力を要することも知ることができた。 これらの衣生活文化から,生活と衣文化の結びつき,伝統的な衣生活文化の重要性を再認識し,これからの衣生活に失われているものや足りないものに気づき,生活に生かしていく姿勢を養えた。この点で,今回の授業実践は意義深いものとなった。
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